Jライブラリー

第2部 パネルディスカッション

ジンテック セミナー

山形県は如何にしてテックとバンクを
地域的に融合させることができたのか

【パネリスト】
山形銀行 代表取締役専務 経営統括本部長 三浦 新一郎 氏
荘内銀行 営業推進部 コンサルティング営業室 シニアマネージャー 渡邊 浩文 氏
山形大学大学院理工学研究科 ものづくり技術経営学専攻 専攻長 教授 小野 浩幸 氏

【モデレーター】
共同通信社 編集委員 橋本 卓典 氏


橋本:今年のテーマは「可能性の地域金融」です。パネルディスカッションでは、冒頭に荘内銀行の渡邊浩文さんにプレゼンテーションをしていただき、その後にディスカッションに入っていきます。では、よろしくお願いします。

荘内銀行 営業推進部 コンサルティング営業室 シニアマネージャー 渡邊浩文氏
工場の社長に言われた一言が山形県産業技術振興機構への出向へ

平成2年に荘内銀行に入行し、平成16年に山形県産業技術振興機構に出向をしました。このときに学んだ技術的な知識や経験が、後の私の銀行員生活に大きな影響を与えました。出向のきっかけとなったのは、機械装置のメンテナンスをする企業からの新工場の建設費用5,000万円の融資のご相談です。融資稟議を書いてみましたが、技術力も生産能力もうまく説明できず、分からないことばかり。結局、山形県工業技術センターに2週間ほど通って装置について教えていただき、その内容を融資稟議に反映しました。工場の建設は時期尚早ということで中止になりましたが、そのときに社長と技術部長から言われた言葉が、ちょっと刺さったんですね。「よくここまで当社の技術を理解してくれたね。銀行で技術の話ができたのは、君だけでした」「他は、担保がこうだとか金利がこうだとかと、条件しか話をしてこなかった。もし中止にならなかったら君に頼もうと思っていたんだよ」と。そして最後に「銀行の方々がこのぐらい製造業を知ってくれたら、付加価値が上がる企業が多くなると思う」という話をしてくれました。わたしは理系ではありません。でも、お客さまのお役に立つためには、一定レベルでお客さまの技術やビジネスモデルを理解しないと仕事にならないんだということがその時に分かりました。そこで最先端の技術を持ち、世界で活躍している人たちと働けば、何か身に付くことがあるんじゃないかと考えて、県の公益財団法人である山形県産業技術振興機構に出向させていただきました。

研究者の中に銀行員が一人 そこで学んだこと

突然50人ほどの研究者の中に銀行員が入ったため、始めの方は「あいつは何をしに来たんだ」という雰囲気でしたが、工学書を読んでは分からないところを嫌になるほど研究者に聞きにいっていたら、徐々に受け入れてもらえるようになり、最終的には文系人間で唯一、研究進捗会議に出させていただけるようにもなりました。出向期間中、様々な出会いがあり技術的なこと以外でも、世界観や哲学、ビジネス、そして一歩間違えれば技術は兵器にも使えることから、倫理観についてしっかりと学ばせていただきました。そしてこの時間は、銀行員として自分はどう生きるのかということを見つめ、決めていく時間にもなりました。

製造業の付加価値をあげるためにどうしたらよいか

製造業のお客さまは4つに分類されます。一つ目はメーカー。二つ目は大量生産できる体力のある地域のマザー企業。三つ目は固有の技術力を有しているOEMの下請け企業。最後に一番多いのが発注企業に応える完全な下請け企業です。それぞれ社長が考えていることは異なり、メーカーであれば技術開発や販路開拓、またはコーポレートアイデンティティーだったりしますし、マザー企業では大量生産するための設備方針であったり技術開発であったり。それぞれの視点に合わせ、さまざまな対応をしています。下請け企業では設備投資の話も多いんですが、一番多いのは現場改善の支援。例えば生産性の向上や製造原価をいかに下げるかというような相談です。現場改善には山形大学のお手伝いをいただいていて、東京大学の藤本先生の流れの理論、リーンの生産方式で工場を改善するという手法で支援しています。また、ものづくりの補助金だけでなく、山形県独自の研究開発・設備投資・販路開拓といった、それぞれの段階での補助金申請のサポートもしています。

世界トップクラスの木工製作技術を世界へ売りにいく

OEM企業の支援の事例として、山形県朝日町にある朝日相扶製作所をご紹介します。木工製作のプロ集団で、世界でもトップクラスの木工製作の技術を誇る企業です。主な取引先は国内ではオカムラ、イタリアではアルフレックスやAD COREといった一流家具メーカーですが、ニューヨークの国連本部ビルの議場の椅子260脚を受注した実績もあります。この企業に、経済産業省の地域中核企業創出・支援事業、これのハンズオン型の提案をしました。地域の中核企業の成長を通じた、地域への波及効果を及ぼすプロジェクトを支援するものです。それに伴い、われわれは本場である北欧の家具の製造企業が持つ課題を朝日相扶と一緒に洗い出し、それを持って、海外に技術を売りに行きました。海外展開のプロジェクトチームの肝は国際コーディネーターですが、東北芸術工科大学や現地に住むマイスターの方、さらには大使館にも支援に入っていただき、現地の企業とコンタクトを取り、フェアへの出展ではなくCEOに直接会えるところまで当行でセッティングをさせていただいたところがポイントです。あわせて、プロダクトポートフォリオ分析や新素材の開発のほか、50年の歴史を持つ朝日相扶のコーポレートアイデンティティーを改めて策定。また、バリューチェーンの把握によって、改めて企業の特徴や強みも浮き彫りになりました。その結果、北欧ツアーでは様々な収穫があり、高度な技術を求める各国のトップメーカーと提携、受注が実現しています。

コロナ禍においての製造業支援“SN変換”

コロナ禍にける製造業の支援のキーワードのひとつとして、1つの技術を製品A、B、Cと変換させる“SN変換”があります。コロナ禍を技術変換のきっかけとして考えてみる。例えば重層プレスの技術を持ち、通常だったら紙の型抜きをしている企業が地域貢献のためにマスクをつくる。蒸留技術がありウイスキーの製造をしている企業がアルコール消毒液をつくる。こういったように時代背景に合わせて技術を変換することができます。先ほど三浦さんのお話で出てきたIMUZAKは、私どもでも本年度サポイン事業を支援しましたが、先ほどの曇らない内視鏡ガラスを、SN変換で映像を浮遊させる技術に変えました。サランラップのようなものに表面加工をすると、スイッチが浮遊して見えるようになるという技術で、コロナ禍において、トイレのTOTOと組んで申請をしています。また、プレスの先に付けるトムソン刃をつくる技術を持つ企業では、平常時は医療用の楽流カップをつくっていますが、コロナ禍より立体型マスクをつくり地域に供給しています。少し先の地域金融を考えると、重要なのは集合知。それぞれの企業や地銀・信金が単体でできることはそんなに多くない。それぞれの組織を越えて、企業支援のノウハウを共有していく仕組みが、今後絶対に必要になっていくと考えています。
 
橋本:ありがとうございます。では、早速パネルディスカッションに入っていきましょう。去年の2月ごろ、東北経済産業局の六沢さんという方が「橋本さん、何か山形って変なんですよね」と言いました。ものづくり補助金の申請件数が金融機関からやたらと出ている。しかも、複数の金融機関から出されている。さらに、そんなに収益につながらない小規模事業者持続化補助金に対しても、山形の人は手を抜いていないんだと。これについて考えたときに、日下さんが地域経済インテリジェンスとおっしゃっていた、モノづくり企業を支援していく“知性”の感染が広がっているんじゃないか、という仮説が浮かび上がりました。県全体でお互いに意識しながら、影響を与えながら、さまざまなところで、レベルで、いろんなことが起きているんじゃないか、という仮説です。さて、小野先生にお聞きします。山形県というのはどんな場所なのでしょうか。第三者的な立場から、お考えをお伺いできますか。

小野:モノ補助をみると、確かに山形県は福島に次いで採択件数が多い。申請する主体数が多い県が申請数も採択数も多くなるということに不思議はないんですが、実は山形県は支援機関数からいうと、宮城の2.5分の1、福島の約半分しかありません。そして、金融機関による申請の比率が90%を超えている。これはおそらく東北以外の県で見ても、非常に特殊な状況です。もちろん山形銀行や荘内銀行のような地方銀行も頑張っていますが、小さな信用金庫や信用組合に至るまで、非常に積極的に取り組んでいる。実は橋本さんに言われるまで気が付かなかったんですが、非常に地味で地道なんだけれども、ひるまずに支援するスタンスがある。技術だけ良ければいいとか、申請書が書ければいいとか、補助金が取れればいいとか、そういう感覚とはちょっと違うんですね。事例にもあったように、大学の研究者や専門家、機関に関わらずどんどんつながり、役割分担をしてやろうする。取引のない企業であってもその企業を応援したいとなれば、ごく当たり前のように取り組む。こういったことも非常に特殊です。山形県の工業史が非常に面白いのは、無くなった産業から新しい産業に生まれ変わる際に、プレーヤーが入れ替わるのではなくて、産業トランスフォーメーションによって地域や企業が乗り越えていくということ。なおかつ、前の技術や産業が無くならない。もともと日本は世界には全く例のない、長寿企業が多いという産業構造を持っていますが、その中においても山形は京都に次いで2番目に長寿企業の比率が高い県なんです。欧米は企業寿命20年説の中で新陳代謝してプレーヤーが代わっていきますが、山形には技術や体質や体制を変えながら産業を持続的に行うDNA、や文化があります。さらに、いろんな人が同時多発的に、もしくは時差的に、同じ方向に向かって活動を進めていることが重なり、現在に至っている。そんなイメージがあります。

橋本:ありがとうございます。三浦さん。顧客本位を具体的に、実効性を伴って実行していくことは非常に難しいと思います。MSPにたどり着くまでに悩まれたこと、特に技術支援アドバイザーがもたらしたインパクトとはなんでしょうか。

三浦:私は平成6年に三菱銀行に入行し、15年前に山形に帰りました。三菱銀行時代は業務企画部や融資部に所属し、多くの案件を審査していましたが、結局BS、PLを見ているだけでは、企業のことは理解できない。短い時間の間で決済をする繰り返しの中で、業種別に戦略の違いや収益の特性を見つけながら、企業の強み、弱みを理解しようとしてはいましたが、強い問題意識と物足りなさを感じていました。特にものづくり企業、中堅、中小企業を見る場合に、技術力を評価したいという思いは20代のころから持っていました。当行の初代の技術支援アドバイザーである久松さんと、ある送別会の席で2次会に行きました。そこで向かい合って話をする中で、「縦軸に技術評価、横軸に信用格付けでのマトリクスのイメージを持っているんですが、技術評価格付けってできませんか」と持ちかけたんです。久松さんは目を輝かせて「できますよ」と。そこで一日考えて、やってみることにしました。そうしたら、一気に組織が動きだしました。私が言ったから組織が動きだしたのではなく、お客さまのための支援、新しい取り組み、そして基本的な考え方。面白さを、みんなが理解してくれた。そうしているうちに一気に進み、アドバイザーは1名から4名まで増え、研修体系もできました。ビジネスマッチングも活発になり、現場からの支援要請はひっきりなし。順回転でどんどん組織が強化されてきました。顧客、取引先のために役立つ仕組みをつくるという視点と、最初のアイデアにぶれがなければ、スイッチを押すだけで組織は順回転して強化されていくのだと思います。ただ、技術評価の仕組みが実現できたのは久松アドバイザーが来ていだたいたおかげ。外部との連携という言葉は耳障りはいいですが、やっぱり一番大切なところは自分たちでやらなければ駄目だと思うんですね。ですから、将来本業となり得るような分野、本当に顧客のために役立つと信じられる分野は、内製化するべきです。ちょっと時間がかかっても、必ず返ってくる。そのための人材を登用し、仕組みづくりをすること。リスクを取って内製化し、自前のノウハウをきちんと積み上げることが大切だと考えています。

橋本:さて、渡邊さんが文系でありながら、技術に精通し、技術者と語り合う言葉を持つ、いわばテックバンカーになれたのはなぜなのか。言い方を変えれば、渡邊さんみたいな人間ができあがるのは一体どんな組織なのでしょうか。

渡邊:理系、文系という壁があるときに、研究者と話をするには翻訳作業が必要だと思うんです。一般的に、組織の中枢には文系の方がいることが多いので、理系の方が使う言葉や文章を文系の方にうまく伝えることができるようになれば、理系の方々が考えた技術を使ってビジネスを展開していくことができる。技術だけがあっても駄目だし、戦略だけあっても駄目なんですよね。今日、僕が話をしたときに、難しく感じる言葉はあまり使わなかったんじゃないかと思うのですが、翻訳することで、組織の中にうまく伝えてこれたという実感があります。一方、知的財産をどのように守っていくのかというような法律的なところは、文系の人の方が得意だったりしますから、その場合は逆に翻訳していくことになりますね。翻訳機能は全員に必要なわけではなく、組織に1人いれば非常に役に立つというような立場なので、個が強い、ランボーみたいな立場でいられています。

橋本:小野先生、組織づくりについてお話しいただけますか?

小野:15年ほど前に組織対組織の体制、フレームをつくろうと思ったんですね。大学と金融機関で連携協定を結び、ルール化して、というようなことを考えたんですが、うまくいきませんでした。その後に、組織とか体制というよりは、個だと考えるようになって。最終的には、大切なのは人をどのように育てるかだと強く感じ、人材育成という方向に舵を切りました。一方で育成さえ上手くいき、ランボーのような人が組織の中にちょっといればいいのかというと、そんなに甘くもない。そういう方がいること自体はすごく重要なんですが、それだけではやっぱり難しくて、両方必要だと感じています。今日のテーマである「可能性の金融」を各金融機関がやるときに、個から始めればいいのか、それとも組織から始めればいいのかと悩まれると思いますが、7~8割は個から始めるのが上手く行くと思います。そこはやっぱり個が大事だと思うんです。ところが、ドラッカーは個だけではうまくいかないと指摘しています。先ほど三浦専務が久松さんが来たことの影響をお話されていましたが、久松さんの存在だけだったら、組織の中で埋もれてしまうリスクもあったはずです。三浦専務が、組織の中における位置付けや方向性を明確にするというスイッチを押したことが大きくて、残りの2~3割はそこにかかっています。かつては組織を固めればうまくいくと考えられていましたが、そこから変遷し、今は組織を構成する人がどう考えてどう動くかが、結果に大きな影響生み出すという考えにシフトしています。この流れは金融政策の変遷にも非常によく似ていて、金融検査マニュアルでルールを守れ、KPIだと言っていたけれど、それでは今の政策ニーズに応えきれないという状況になって、心理的安全性とか、ビジネスモデルに対してどう人のモチベーションを上げて顧客本位の金融を実現させるのかという方向にきている。物事を実現するためのメソッドが時代とともに変わり、それに伴った政策も変化しているのだと思います。

橋本:金融庁でさえ、金融行政に付加価値を持たせなければ意味がない時代だということですね。三浦さんにお伺いしたいのですが、生産性を向上させる一方で付加価値も向上させなければならないというようなプランがあったときに、混乱は生じないのでしょうか。

三浦:なかなか難しい質問だと思います。山形県の自動車部品産業は平均すると技術力も財務内容も良くないんですね。それを中間報告会で発表したときに、小野先生から「この技術評価格付けは、生産性についてどのように見ていますか」というご質問をいただきました。それが引っ掛かり、技術支援アドバイザーと自動車部品産業の生産性の考え方について、意見交換をしたんです。自動車部品産業でも、ある程度大きな企業は確かに生産効率が非常に大事ですが、山形県の場合は売上でいうと10億円前後ぐらいの、いわゆる中小企業が多い。そこで生産性を突き詰めてもあまり意味がなく、それよりも固有の技術などを評価した方が、売上を上げるための評価としては貢献するのではないか。そういう議論の上で、今も評価軸については変えずに貫き通しています。ただ今は産業全体を評価するために一律の軸で見ていますが、業種別に見ていくと評価軸が異なる側面もありますので、この先、業種別に格付けの中身を変え、それによって支援メニューも変わってくるということもあるかもしれません。

橋本:三浦専務は新しいことへの挑戦を強く掲げられていましたが「どうしても今別のことをやりたいから、新しいことへの挑戦は先送りする」というのはありがちな話だと思います。現場でご覧になっている渡邊さんはどうお感じになりますか。

渡邊:企業によって違いはありますが、新しいことへの挑戦に対する抵抗は確かに大きいと思います。ただ、今はAIなど破壊的なイノベーションが起きていて、さらにコロナ禍の現状において、新しいところに向かっていかなければ、自分たちの未来は右肩下がりであるという認識はどの企業も持っています。だからこそ、新しい破壊的なイノベーションにどうアクセスするのかを考えるのが重要なわけで、そのひとつの考え方としてSN変換や、新技術への挑戦が出てくるのだと思います。

橋本:今、コロナ禍の問題があります。これをどう乗り越えていくのか、小野先生のご意見を伺えますか。

小野:わたしはいつも逆説的にものを言うんですが、コロナについても、この状況だからこその必然性で、急激にコンタクトレステクノロジーの導入が進みました。今まではセキュリティーの制約があり、一部のものづくり企業、特にサプライヤー側の企業とか、金融機関とか、場合によったら公務員の分野は、必要性を理解しながらも遅れていました。しかし、今、必要に迫られていろいろなことをやられていますよね。ということは結果として、新しい可能性を生み出しているんです。京都信用金庫の増田元会長と話しているときに、この時期、この状況だからこそデジタルリテラシー、リモートリテラシーが今後の金融を決めるとおっしゃられたんですね。見方を変えれば非常に大きなチャンスなのではないかなと思います。デジタルの時代だからこそ、デジタルでごまかせないもの、つまり現場に強いとか、顧客を目利きできるとか、顧客のビジネスモデルを把握できるとか、そういう能力が成否を分けることにもなります。このタイミングでデジタル化が進み、コミュニケーションが大きく変革することで、金融仲介の在り方や能力の高さが、今後ますます生かされてくるんじゃないかなと感じています。

橋本:コロナ禍において、現場の様子やお客さまとの関係で、三浦さんはどういう気づきや変化を感じていますか。

三浦:コロナの影響によって、現場からは企業の業績がかなり悪化していることに関連しての相談が来ています。私どもの経済研究所のデータでも、DIで見ると製造業の見通しが非製造業よりも悪いという結果が出ていますが、そうなると現場は将来の見通しについての判断を悩みますよね。そこで技術支援アドバイザーに、技術評価をやってほしいという声が多く上がってきています。業績悪化の中で、将来性を見極めるために技術評価を使おうという、現場なりの判断だと思います。そもそも事業性評価はその見極めのためにあるわけなので、狙いと異なってはいますが、本来的な意味合いの事業性評価が行われていると感じています。

橋本:渡邊さん、“可能性の地域金融”という時代に入っていく中で、バンカーひとり一人がどのように時代と向き合っていけばいいのか、アドバイスをいただけますか。

渡邊:組織に属していたとしても、個の強さが必要な時代が来ています。それぞれの領域に強い人たちを集めてプロジェクトを組成し、遂行したら解散というようなビジネスモデルがさらに増えてくると思います。企業が人を育てていく時間や余裕がない時代ですから、資格だけでなく、全体を俯瞰してみた中での自分の得意な分野を早く持った方がいい。そうするとプロジェクトに参加したりする機会も増え、それによって自分の付加価値が上がっていくと考えています。

橋本:小野先生、これからの地域金融に求められることについてご見解をいただけますか。

小野:今、業界全体で高い意識を持っているということは、とてもいいことだと思います。コロナは確かに未曽有の国難ではありますが、日本や日本の地域が持っている強みを改めて見直し、未来を見据えるという意味では、むしろチャンスなのかもしれません。われわれはどうしても目の前の国難にだけフォーカスをしがちですが、実はそれ以前に市場構造や産業構造、サプライチェーン構造が変わっていることに気が付かないと、右肩下がりになっていくという事実を見落としがちです。目の前がどんな状況であろうとも、今どんな大きな変化が起きていて、それ対して強みをどう生かしていくのかにフォーカスすること。それこそが国難の時期には求められるのではないでしょうか。地域金融機関は崇高な義務としてのノブレスオブリージュをこれまでも果たしてこられましたし、これからも果たしていくのだと感じています。

橋本:では最後に三浦さんから、山形銀行が地域にとってどういう銀行になっていくのかについて改めてお話いただき、本日は締めたいと思います。

三浦:顧客から圧倒的に信頼される存在である、ということに尽きると思います。そのために、われわれ経営者自身が「顧客のために何ができるのか」ということを熱い思いで考え、部下と共有する。そして銀行一丸となって、顧客のために一緒に戦う。銀行経営の環境は確かに厳しいですから、短期的な収益を追わなきゃいけない側面もありますが、その一方で経営者自らがお客さま本位の熱い思いを持ち、しっかりと共有するということが、今、一番大事なことだと思います。

橋本:ありがとうございました。

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