Jライブラリー

アフターコロナ第10回:非接触決済のデジタル商品券と地域創生

吉元利行 コラム

2021年7月15日から福島県の会津磐梯町で日本発のブロックチェーン技術「IROHA」を使ったデジタル地域通貨が、デジタルプレミアム共通券という形で発行されている。磐梯町は、人口5千人にも満たない小さな町であるが、2020年にデジタル変革戦略室を設置し、町の各種委員会や審議会がオンライン開催され、ペーパーレスの取り組みや職員向けのDXオンライン勉強会が積極的に行われている。また、渋谷区などでも導入されている保育所と保護者のコミュニケーションツール「コドモン」を導入して、アプリで保護者と連絡がとれるようにしている。保護者や祖父母も含めた情報連携を図り、緊急時の連絡などにおいてスピードと利便性を追求し、デジタル変革を進めている。

デジタル変革戦略室 – 磐梯町ホームページ (town.bandai.fukushima.jp)

デジタルプレミアム共通券の仕組み

磐梯町では、これまで発行してきた紙の商品券に加え、今年から「磐梯町デジタルとくとく商品券」(以下「デジとく商品券」という)が発行される。この「デジとく商品券」は、スマートフォンにチャージして使うデジタルの商品券で、町民一世帯5,000円から10万円まで購入が可能。紙の商品券のプレミアム率が20%に対し、25%のプレミアム付き。紙の商品券と違い、1円単位で利用可能な点が便利である。

「デジとく商品券」はスマホを紛失しても、商品券情報が新しいスマホで復元できる点など、安心感もある。また、事業者側も、スマホがあれば売買情報を管理できること、決済手数料が無料であること、現金と違い非接触なので安心して導入できることがメリットとしてうたわれている。

 利用者は、iOSもしくはAndroidのアプリストアで「デジとく商品券」アプリをダウンロードして利用者登録のうえ、町の商工会事務局で現金を払いチャージする。利用する際は、店舗側はスマホでアプリを立ち上げ、買い物代金を入力してQRコードを表示し、利用者側はQRコードを読み取るか、紙に印刷された店舗のQRコードを利用者のスマホで読み取って金額を確認して送金する仕組みとなっている。仮に、代金額の間違いがあっても、デジタル商品券の送金で精算が可能だ。

利便性の高いデジタル通貨

磐梯町の「デジとく商品券」は、Digital Platformer株式会社が開発したデジタル通貨発行サービス「LITAプラットフォーム」を利用している。このプラットフォームのブロックチェーン技術は、カンボジアの中央銀行デジタル通貨「バコン」やブロックチェーンを利用した国内初のデジタル地域通貨「白虎」(会津市)で既に利用実績のあるソラミツ株式会社の「ハイパーレジャーいろは」で採用されている。

 中銀、デジタル通貨「バコン」の正式運用を開始(カンボジア) | ビジネス短信 – ジェトロ (jetro.go.jp)

白虎/Byacco (びゃっこ)は、会津若松市にある会津大学のために開発された日本初のデジタル地域通貨。大学の食堂で代金の支払い(友達と支払いを割り勘できる)や売店で商品の購入、残高から友達へ送金ができる。

 「バコン」はスマートフォンのアプリを使い、電話番号またはQRコードで店舗への支払いや個人間・企業間の送金ができる決済システム。カンボジアの通貨「リエル」の銀行口座に裏打ちされており、電子マネーより安心であり、約500万人が現在使用している。各国の中央銀行は、デジタル通貨の発行の研究を続けており、Facebookもデジタル通貨「Diem」の発行に取り組んでいるが、カンボジアの取り組みは先進的な取り組みとして、注目されている。

【デジとく商品券ステッカーと利用画面のコピー】

町民のリテラシーを高めて地域創生を

 地域経済の活性化を目的に、各自治体は独自にプレミアム商品券を発行しているが、発券業務や販売店との精算業務にコストがかかっている。このコストを削減できれば、発行額を拡大でき、更なる地域活性化が図れるため、行政コストを中心にその削減が課題になっている。
「デジとく商品券」は、電子マネーのQRコード決済に比べ、高度なセキュリティを有し、カンボジアのデジタル通貨で実用されたブロックチェーン技術を採用したデジタル地域通貨を使用しており、より円滑な運用が図られる。また、デジタル化により、商品券の発行と利用及び精算に係るコストが大幅に削減できるほか、紙の商品券や電子マネーのように1回限りの使いきりではないため、地域内での通貨流通が図られ、地域経済のさらなる活性化につながると見込まれている。
 また、有利な利用が見込めるデジタル商品券を利用することで、デジタル化に取り組む意欲の向上と町民のデジタルリテラシーの向上につながることが期待される。

キャッシュレス先進国のスウェーデンでは、住民のITリテラシーを高める工夫が積極的にされてきた。1990年代の中盤には、ストックホルム市内全域に光ファイバーを敷設し、通信環境を整備したうえ、企業経由で働く市民にパソコンを一人1台リースする仕組みが導入された。スウェーデンでは、18歳以上の女性の就業率は90%を超えるので、ほとんどの家庭にパソコンが2台設置され、その後の若者のスタートアップ起業(例えば、SKYPE、Klarnaなど)につながっている。
わが国でも小学生に学習用タブレットが配布され、学習補助に使われているが、ITスキルを向上させるなら、ゲームなどを通じてプログラミングまで勉強できるパソコンを配布すべきであろう。スマートフォンの普及が進む中、「デジとく商品券」のような利用インセンティブのある施策を採用することで、住民のITスキルの向上が見込める。地方自治体として、市民の生活や暮らしに配慮した様々な取り組みが求められるが、将来を見据えれば住民のITスキルやリテラシー向上にむけて幅広く取り組む戦略を進めていくことがスウェーデンのように地域創生から世界に向けた発展につながるのではないだろうか。

※本内容の引用・転載を禁止します。

pagetop