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アフターコロナ第22回:地域通貨と通貨の未来

吉元利行 コラム

非接触決済がもはや当たり前の時代になり、地方では今までの商品券による地域振興策が電子商品券に代わるなど、大きな変化が起きている。利用するには、スマートフォン(以下「スマホ」という)に地域限定の電子商品券アプリをダウンロードする必要があり、すでに多くの人がダウンロード済みのコード決済アプリや交通系電子マネーアプリとは操作方法・利用手順が異なるので、ユーザーフレンドリーとはいえない。

それでも、各種商品の値上げが続く中、2割から3割のプレミアムが付与される地域振興電子商品券の魅力は大きい。自治体は、コロナ禍で傷んだ地元の飲食店や商店の救済などを目的にしているが、果たして、その未来をどう考えているのか。

電子商品券の増加

最近の電子商品券について、筆者が体験や調査したものを中心にまとめると、以下のものがある。

(2022年7月現在)

紙のプレミアム付き商品券は、発行する自治体の住民や在勤者を対象に、地域限定で利用できることから、資金の地域外流出を抑え、地域を活性する効果がある一方、対象者が多くないことから、発行規模はあまり大きくないうえ、発行や利用後の精算にコストがかかる。そこで、スマホアプリを使ったデジタル商品券が最近増加しているようだ。

紙からカードタイプに変えても、カードの発行や情報を読み取る端末機にコストがかかるなど初期費用が高いという課題があったが、スマホの普及により、スマホやタブレットで売上や精算が可能になった。デジタル商品券が増えた地方都市では高齢者も多く、電子商品券がどこまで浸透するか不安もあったようだが、20%~30%の高率なプレミアムが付与されることもあり、即日完売となっている。アプリ決済に対する市民の抵抗感も少なくなり、利用に伴う実体験を経て、市民のデジタルリテラシーが向上しているようにみえる。

永続的な地域振興になるか

しかし、商品券発行は、短期間で、かつプレミアムが必要なので発行額が制限される。

そこで、最近は、デジタル商品券発行と同様の目的で、デジタル通貨が発行されるようになった。

デジタル通貨には、磐梯町のようにデジタル商品券の延長的に自治体で発行するもの、地域ポイントカードの延長として民間事業者が発行するMEGURINのようなものが以前から見られたが、最近は地域に密着した地方銀行や信用金庫など金融機関が発行するデジタル通貨も出てきた。デジタル通貨の場合、一度使用したら店舗から回収される電子商品券と異なり、受け取った店舗も仕入れなどに利用できるので、地域でデジタル通貨が循環することになる。

(2022年7月現在)

金融機関が発行し口座を登録すると、登録口座間で資金移動ができるので、家族間や知人間での資金移動、加盟店間での仕入れ代金の決済なども可能になり、大手民間事業者の電子マネーよりその利便性が高くなる。またプレミアム商品券と異なり、観光客なども利用できる。木更津市ではアクアコインでしか買えない激レアメニューを紹介する特設サイトを設けたり、飛騨高山ではさるぼぼコインでしか買うことができない裏メニューを集めたWebサイト「さるぼぼコインタウン」を展開したりしている。磐梯町のように、ゴルフ場やスキー場、道の駅、複数の宿泊施設を年間約120万人もの観光客が訪れることに目を付け、観光客もばんだいコインを利用できるようにし、10%のプレミアムを付与することで外からの資金を呼び込み、地域経済の活性化を図ろうとする例もある。

地域通貨を持つ動機付けが必要

南島原市の「MINAコイン」が『ひと』だけでなく、『おかね』の流出などを抑制し、地域内で消費拡大する施策として実施されているように、デジタル地域通貨には地域内の経済活性化という目的がある。しかし、利用可能な場所と期間が原則限定されており、クレジットカードのように、いつでもどこでも使えるわけではないため、利用者からすれば不便な面がある。また、みずほ銀行などが発行するJ-coin Payは、10月から少額資金決済網「ことら」と接続し、無料で決済や資金移動ができるようにすることを公表している。

デジタル地域通貨の継続的な運営のためには、その不便さを補い、全国型で汎用性の高い決済に対抗し、選ばれるための環境の整備と施策が必須である。例えば、公共料金や行政サービスの料金の決済に地域デジタル通貨を原則とすれば、行政コストの削減につながる。また、行政側から行政サービスに協力する個人への報酬、ボランティア活動や健康促進活動と結びつけて住民に通貨をポイントとして付与し、社会的な取り組みへの参加を促すことなどが考えられる。また、住民への広報や災害情報などの告知、住民から行政施策へ意見する際の伝達手段として活用することも考えられる。そのためには、地域への貢献、コミュニティやお店とのつながりを大切にしたいという住民の機運を盛り上げるための仕掛け、ストーリーが必要であろう。

デジタル通貨の循環が実現すれば、住民の日常の利用状況がデータ化される。通貨の流れを把握することで、データに基づいた、地域に合致した客観的で具体的な施策を立案、展開することも可能になる。行政は、地域活性化という漠然とした目的ではなく、デジタル地域通貨の仕組みと機能、スマホという媒体の機能の活用により、何を目指して発行するのか。地域や住民にとっての明確なメリットと実現したい未来を、住民や事業者、コミュニティなどに伝える仕掛けをしっかり固める必要がある。そうしなければ、単なるプレミアム目当ての短期のお祭りにしかならない。

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