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アフターコロナ第23回:デジタル商品券と電子マネー・デジタル通貨との違い

吉元利行 コラム

前回は、地域で発行されるデジタル商品券とデジタル通貨を取り上げ、これを利用する住民に地域におけるメリットとゴールを明確にし、それを伝える仕組みが重要だと述べた。

ところで、地域デジタル商品券、地域デジタル通貨は、場所を限定せず全国の加盟店・取扱店で利用できる電子マネーとはどう異なるのか。また、最近よく聞くようになった法定通貨担保型のステーブルコイン(stable coin)とはどう違うのかについて考えてみたい。

地域デジタル商品券の特徴

明確な定義はないが、地域デジタル商品券とは自治体が地域経済の活性化などを目的に地域住民や地域の勤労者を対象として発行し、当該地域の商店でのみ利用できる電磁的な記録がされた商品券で、前払い式で購入するものである。(参照:Jライブラリー|アフターコロナ第22回:地域通貨と通貨の未来 (jintec.com)) しかし、民間事業者が発行する資金決済法に規定する前払式支払手段としての商品券とは異なる。地域デジタル商品券は利用できる地域が限定されているだけでなく、利用できる期間も限定されていることが多い。利用できる期間が6か月を超えると、資金決済法に基づく第三者型の「前払式支払手段」として、発行に当たって財務局に登録が必要であり、かつ、未使用額の50%相当額の供託義務が生じる。そのため、利用できる期間を6カ月に限定していると考えられる。したがって、地域デジタル商品券は、自治体等が発行する短期間のみ有効な(資金決済法の適用がない)前払式支払手段ととらえることができよう。

なお、地域デジタル商品券は、ICチップが付いたカード型やスマートフォンのアプリを使った非接触方式型(QRコードを使用するなど)など様々な形式で発行されている。紙の商品券では、「お釣りは出ない」というのが一般的であったが、デジタル商品券であれば金銭的価値を1円単位で管理できるので、現金や電子マネーと同じ感覚で使い勝手が良い。さらに、購入額の1割から3割のプレミアムが付くので、割安で商品の購入やサービスの提供を受けることができる。このように、地域デジタル商品券は、「1円単位で使うことができるプレミアムが付いた短期間有効な電子マネー」ともいえる。

デジタル商品券と地域デジタル通貨の違い

地域デジタル商品券をプレミアムが付いた短期間有効な電子マネー類似のものと考えると、地域デジタル通貨と類似性が出てくる。地域デジタル通貨は、デジタル商品券と比較するとプレミアム率は低いものの、同じように地域の商店で決済に利用できる。しかし、商店は受け取った地域デジタル通貨を商品の仕入れや従業員に対する報奨に使ったりするなど繰り返し利用ができる点で、地域デジタル商品券とは根本的に異なる。さらに、地域デジタル商品券や電子マネーを現金化することはできないが、銀行など金融機関が発行する地域デジタル通貨は、銀行口座を経由して現金として受け取ることが可能である。これが、地域デジタル「通貨」と呼ばれるゆえんである。

このような違いが生じるのは、デジタル通貨の発行主体が銀行口座(アカウント)で普通預金等の受け入れと送金業務(為替業務)を行うことができる銀行等の金融機関であること、もしくは資金決済法で電子マネーを取り扱える「前払式支払手段発行業者」が併せて「資金移動業」の登録を行った民間事業者であるからである。

資金移動業の登録があれば、銀行の為替業務を行うことができる。利用者が銀行口座又は資金移動業者のアカウントの資金を1円=1デジタル円としてデジタル通貨に交換し、取扱店で円代金の決済にデジタル通貨を使えば、取扱店のアカウントにデジタル通貨として円相当額のデジタル通貨が入金される。さらに、取扱店はそのデジタル通貨をそのまま使うことも、送金に使ったり、アカウントから引き出して現金化することもできるのである。

(参照:Jライブラリー|アフターコロナ第22回:地域通貨と通貨の未来 (jintec.com)

デジタル通貨のこれから

地域デジタル通貨とJ-coin Pay(みずほ銀行が発行する『送る』、『もらう』、『支払う』機能に加え、預金口座に『戻す』ことで現金化できる実質的なデジタル通貨)などの全国で流通するタイプとの違いは、利用地域が地域限定型かどうかの違いでだけであろうか。

確かに地域デジタル通貨は、支払い、送金、現金化でき、利用可能期間が長い、もしくは期間が限定されない点、利用に応じてポイント還元されるなどの点で全国流通タイプとは異なることはない。しかし、ボランティアなどの活動で自治体からポイントが付与されたり、自治体とのコミュニケーションツールとしての利用が想定されたりしている点で明らかに異なる。

また、地域デジタル通貨は、「発行者」がその移転と残高を管理すること、発行者と「仲介者」が同一であることが前提となっている。つまり、電子マネーと同様、発行者が提供するクローズドなシステムの中での経済的な価値の移転であり、その経済価値の移転にはすべて発行者が関与している。

一方、全国流通タイプの場合はJ-coin Payのように発行者と仲介者が同一の例が多いが、最近では、発行者と仲介者が分かれるタイプも出てきている。例えば、資金移動業者であるJPYC株式会社が発行するJPYC(JPYコイン)がある。JPYコインは、ブロックチェーンを使った分散型台帳技術により、発行者から独立したシステムの中でこれを利用したいと思う人や事業者の間で送金や決済に利用できるため転々と流通する。

ブロックチェーン技術を利用した暗号資産取引では、その価値が大きく変動し暴落リスクがあるため、決済や送金には不向きとされているが、「ステーブルコイン」と呼ばれるものは、暗号資産のようなデジタルアセットに法定通貨など価格が安定した資産を裏付けに持つなどして、発行したコインの価値の安定性を保つ仕組み(注1)となっており、価値の変動がなく、低コストで送金に利用でき法定通貨代わりに使える。ステーブルコインを標榜するJPYコインは、前払式支払手段により1JPYコイン=1円で発行され、その後も1円に固定されるように設計されている。

現状では、JPYコインは前払式支払手段と資金移動業の登録を行って発行されており、資金移動業として必要な未履行債務額を超える発行の裏付けとなる資産があり、これがデジタル通貨の発行と流通を支える信用の基礎となっている。(注2)

地域型デジタル商品券・地域デジタル通貨と異なり、銀行等の発行するデジタル通貨は全国で、ステーブルコインは法定通貨の通用する地域で幅広く利用できる。地域デジタル通貨の発行目的が地域の活性化、行政の効率化などにあるとすれば、銀行等の発行するデジタル通貨は資金移動にかかるコストの削減と手数料の無料化、ステーブルコインは民間が発行する法定通貨のデジタル化による決済の多様化とスピードアップ、費用の削減等にあると思われる。

最終的な発行目的に合わせて安定した決済手段として用いることができるかが、今後の課題であろう。

(注1)JPYコインの場合、法定通貨である円の価値と連動した価格で発行され、同額での償還が約束されている。これは、デジタルマネー類似型と呼ばれる。これ以外にも、有力な暗号資産を担保にした暗号資産担保型、アルゴリズムを使って価値の安定を図るニショリッジ・シェア型(無担保型)などがあるが、最近暗号資産担保型、アルゴリズム型は、暴落するなど、価値の安定性に難があることが判明している。

(注2)デジタルマネー型のステーブルコインについては資金決済法の改正により「電子決済手段」と定義され、決済と資金移動に利用できるようになった。

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