Jライブラリー

第2部 パネルディスカッション

ジンテック セミナー

地域の課題を克服!地域課題解決支援室による
『知見結集』の取組み

【パネリスト】
北門信用金庫 営業第二本部 企業支援室 室長 伊藤 貢作 氏
金融庁 監督局 地域課題解決支援室 室長補佐 渡辺 茂紀 氏

【モデレーター】
共同通信社 編集委員 橋本 卓典 氏


橋本:後半はコロナ禍で厳しい環境にある企業が、これからどのように立ち向かっていくのか。事業再生や事業承継、抜本再生などについて掘り下げたいと思います。

金融庁 監督局 地域課題解決支援室 室長補佐 渡辺茂紀氏
金融機関、事業者の経験から監督局として事業者をみる

昨年、信用金庫から金融庁に入庁しました。今日は実務者としての経験等も含めてお話しをということで、登壇させていただいています。実は信用金庫を一度退職し、中小企業診断士として事業者となった期間があります。その後に再び信用金庫に入庫し直し事業再生を手掛けていましたが、独立したときには挫折の連続で、非常に苦しい思いを経験しました。そんなわけで、これまでさまざまな立場から事業者を見てきています。

コロナにより大きな影響を受けている中・小規模企業の支援は必須

8月31日に金融行政方針を変更しましたが、メインの一つはやはりコロナ禍です。3つに分けてポイントを説明しますと、1つ目は「コロナ禍の状況を見極めながら、資金繰り支援から資本性資金等を活用した事業者の経営改善・事業再生等に軸足を移し」というところで、“資金繰り支援”から“経営改善・事業再生支援等”へと明確に書いてあります。2つ目は「地域の関係者の連携」かつ「実効性を確保」というものです。そして3つ目が、本日のテーマでもある「どのように事業者支援の知見を地域もしくは地域を越えて共有していくのかが極めて重要だ」というところです。コロナによって大きく影響を受けているのは中小・小規模事業者だと考えられていますが、相当な件数、金額になっています。この数を今後対応していくとなれば、企業支援のセクションだけでは足りないだろうと。金融機関の現場担当者がそれぞれに事業者の経営改善等の支援に取り組んでいくべき状況にあるのではないかと考えています。

新たな視点での様々な意見が交換されたオンライン勉強会

事業者支援のノウハウ共有のためのオンライン勉強会を開催していますが、意見交換では新たな視点で様々な意見が持ち寄られました。今日はいくつかご紹介したいと思います。ある方は「企業支援は地域金融界にとって合理的な判断ではないのか」とおっしゃっていました。一つは地域の持続性を高めるということが相互にとっていいと。貸出金収益は現状において大きな収益ですから、企業が1年でも長く生きのびていくことは、地域金融機関にとっても重要かつ持続的な収益源であり、結果として地域も生かせ、地域創生にもつながるというご意見です。続いて「企業支援とは事業者がリスクを取るのではなく、リスクを金融機関自身がコントロールしていくものではないのか」というもの。そしてこれができる実務者が圧倒的に足りないという意見を出された方がいました。さらに、20代のある金融機関の方からは「事業者支援では決算書の見方が違うのか」というご質問がありました。例えば、業界平均をはるかに上回る在庫は駄目なのか。そうであればその後どのように手立てしていくべきなのかと。そして銀行の目線と事業者支援の目線ではBS、PLの見方も違うのではないかというご質問がありました。また、債務超過は悪なのか、資本性ローンはどのように活用するのかといった点も勉強会では議論され、大変興味深く感じています。

北門信用金庫 営業第二本部 企業支援室 室長 伊藤貢作氏
「事業者が悪い」の世界観でコロナを乗り切れるのか

アフターコロナで問われる地域企業の知見におけるキーワードは、「おまえが悪い」だと思っています。「再生・支援が必要なおまえの会社が悪いんだ」という今までの感覚で、はたしてアフターコロナの再生局面を乗り切れるのか?という点について、私は強い疑問を抱いています。今までは「結局は経営が駄目だった。あんたが悪いから再生のテーブルにのるんでしょう」という世界観でした。実際にはいろんなボトルネックがあるにも関わらず、常に悪いのは事業者だったわけですね。例えば店舗はぼろぼろだけれど倉庫は新しいという不動産に対してスポンサーが出てきて「倉庫は欲しいが店舗は要らない」というときに、駅前の寂れた商店街の中にある店舗を残したって買う人がいない。いつまでたっても特別清算が終わらないので、結局、再生支援協会も「そんなもの引き受けられない」となるとか。許認可に関するバラバラな役所の解釈とか。債務超過を埋めるためにDDSをやるのか、それとも10年ないし15年後、その企業が改善した後に安全に出せるキャッシュフローの10倍とか15倍以外をDDSするのかとか。事業者からみて「ちょっとどうなのそれ」といった矛盾があちこちにあっても、周囲にある不備は議論をされずに、結局泣き寝入りになってきた。その中において企業支援の名人芸の持ち主が、この泣き寝入り状態の隙間を縫いながら、何とか再生してきたというのが今までの世界だったと認識しています。

再生現場における知見、ノウハウの共有が必要な時代に

とはいえ、コロナの前は私もゆっくりと変化していくんだろうなと感じていたんです。ところが、突然コロナにやられたことによって、いろんな問題が浮上してきました。今はゼロゼロで静かですが、償還期限が始まったら、もしくは引っ張った6,000万をすぐに使い果たしてしまったらどうするのか。事業承継や再生、本業支援、そういうものが合わせ技で出てきてしまうような状態になるという大きな焦りがあって、自分の信金の周りだけやっていればいいというところから、かなり情勢が変わったと感じています。コロナウイルスを完全に殺せる薬や完全に予防できるワクチンがないように、7割経済とか6割経済の中で、コロナがずっと続いてもやっていけるビジネスモデルもありません。医療現場ではこの薬がコロナに効くんじゃないか、これを投与したり吸ったりすると楽になる、そういう知見を集めて何とか戦っていますが、再生現場もおそらくそういうことが必要なんだろうと思います。今、ノウハウの共有が始まってきていますが、一歩ずつ知見を集め、共有していかないとまずい局面にあると考えています。

企業と金融機関の関係は、監督庁と金融機関の関係と同じ構造

隣に金融庁の方がいてこんなことを言うのもなんですが……。私は地域の中小企業で再生をしてきました。常に工場がバンバン動いていて、いろんなことを止められない。そういった状況の中でお金を借りてる以上、中小企業は金融機関に「おっしゃるとおりです」と言うしかありません。そういう世界を非常にまどろっこしく感じていましたが、実は地域金融機関に入ったときに、監督庁の言うことであれば取りあえず「はい」と言う感じがそれとまったく同じだと感じました。この感覚は皆さんもどこかで感じていらっしゃると思います。皆さんが監督庁を見て「うーん」と感じるものは、企業が皆さんを見て「うーん」と思うことと同じです。ですから、われわれが監督庁に対して思っていたようなことを企業に思われないようにするためにはどうすればいいのかを考える。監督庁にわれわれのニーズをわーわー言っても始まりませんよね。同じようにそういうニーズを中小企業もわれわれに対して持っているんだなと。こういうところから始める知見でも構わないんじゃないかと考えています。

橋本:金融仲介というと資金支援が浮かぶ方も多いのではないかと思います。今だったらコロナによるゼロゼロ融資でしょうか。渡辺さん、実際には企業支援というのは何を意味するんでしょうか。

渡辺:最終的にはお客さまのビジネスを改善し、結果を出さないと意味がないと思います。改善するときにはまず素地を作らなければなりませんから、まずは安心して事業ができる環境づくりから始め、当然金融支援もします。事業戦略的なものもやったりする。結局はもうけさせてあげることですよね。

橋本:これまではBSの改善支援が中心で、負債や在庫を減らすようなアプロ―チを支援と言っていたのかもしれませんが、そういう発想自体がもはや少し違うということなんでしょうか。PLとBSの話をされた問題意識の背景にはどういったことがありますか。

渡辺:BSとPL、どちらが優先という問題でもないと思います。金融支援は今、非常に曖昧に進んでいます。この状況ですから、年末、もしくは年越しの資金繰り支援もどう出していくのか。おそらく今までどおりにはいかないと思うんです。PLを改善していくのもそう簡単な話ではないと思うので、今後どのように具体化していくのか、今から準備をしていく必要があります。最終的にはトータルで企業が良くならないと意味がない。ですからBS、 PLというよりも、いろんなことを全てやらないといけない。伊藤さんのお言葉を借りれば名人芸でできていた量をはるかに上回るだろうと感じていますし、その一方、名人芸が必要でないところも多いだろうとも思うんです。

橋本:伊藤さん、事例をご紹介いただけますか。例えば債務超過で大変なケースとか。さきほどDDSの話をされましたが、地域の中での企業再編時にはどういう問題があるのでしょうか。

伊藤:地域の再編で一番ネックになってくるのは、先ほども出た老朽化した不動産です。例えば3つビジネスホテルがあって1つは40歳の後継者がいて、残りは二つとも85歳。極端な話をしてみると固定資産評価額3億円と経済価値1,000万とか500万とか、そういうホテルがあるわけです。そうすると6割経済、7割経済の中でこのホテルを回していこうとすると、何とかすれすれでやっていけたとしても、ものすごく高い固定資産税によって非常にコストが高くなってしまう。あとは、買い手がいないものを会社に置いていていいのかという根本的な問題もあります。それが1点目ですね。もう一つは小規模な会社を再編するとき。例えば工務店で親方が79歳。いい職人さんがいるけれど債務超過だと。借入金が6,000万ぐらいしかない場合でも、6,000万円の債権カットをするとなると専門家の費用だ、何だかんだとさらに1,000万、2,000万はかかりますからコスト倒れしちゃう。そうなると再編しなさいと言いながらも、そこをどうするのかという問題が出てきます。この少額のカットにいちいち再生支援協議会だ、REVICだと入れて調査報告書をやるのか。事業承継も同じことが言えますが、零細企業のコスト問題というのは大きいと思います。

橋本:債務超過というと破綻の確率が相当ある、つまり救えないんじゃないかと思ったりもしますが、どんな支援をどういったアプローチでしていかなければいけないのでしょうか。

伊藤:誤解を恐れずに言えば、債務超過と粉飾決算は、その質によると僕は思っています。何か悪いこと、例えばどこかに別荘を買って会社から外にお金を出すような粉飾決算なのかどうか。冷静に考えたら金融機関が強いた粉飾のようなものもありますし。債務超過も同じで、本業で債務超過したのかどうか。債務超過といっても、結局は赤字の連続というイメージで今は捉えてほしいんですが、そうなったときに売り上げ、粗利率が下がるように、大体半々ぐらいで粗利を削っていくような債務超過というのは非常に深刻なんです。メタボの人は肺炎になりやすいと言いますが、肺炎を直すためには栄養を与えないとならないけれども、栄養を与えるとメタボが治らない。メタボを治すために痩せようとすると肺炎が悪くなると。こういう状態の債務超過の場合は、普通の企業支援では救えません。債権カットしてスポンサーを連れてきてと、全く新しい概念じゃないと難しいので目利きが必要です。債務超過に対する向き合い方は、善悪というよりはそういうスタンスだと思います。

橋本:コロナ前の再生支援では、再生支援協議会のようなものがあり、金融調整がありました。ただそれはメインバンクが腹をくくらない限り、ほとんど機能しないというのが私の認識です。ですから、結局はメインバンクが腹をくくらないと、企業支援なんてどうにもならないという思い込みがあるんですが、サブ、いわゆる準メインの金融機関が企業支援の知見を学んでいく意義があるということなんでしょうか。

渡辺:実際、最終支援のフェーズでの金融協調は大きなファクターであり、大きなコストだと思います。メインの力の方が圧倒的に強いので、メインがどのようなジャッジをするのか、どのような考えでその企業にアプローチしていくのかが極めて重要であることは間違いありません。全体最適という視点で考えれば、これからサブ行の立ち位置も変わってくるのかなとは思いますが。結局は今あるルールの中で戦わなければならないわけですし、理想論を語ったところで一歩も進みません。正直、コロナを理由にして今やるべきことを先延ばしにしていいのかとも思う。われわれに地域金融機関として目の前の企業を救うという責務があるのであれば、やっぱりそこに立ち向かわなくてはならないと思います。

橋本:伊藤さん、現場での金融調整はどうですか。

伊藤:例えば手前どもがメインの場合は、DDSでも債権カット後の新会社に引き継ぐ商決済についても基本的に事業性を評価しているわけなので、正直なところ他の銀行は要りません。メインとしてリスクを持ってやっているわけですから、他の銀行に「じゃあ、この再生計画の達成可能性はどうですか」と質問されるぐらいであれば、DDSもカットの前に全部メインに寄せてしまってさようならというほうが楽です。次に、メインとサブという観点からいうと、例えばメインが10億、サブが2億やっているような力関係の中で「再生の方向は定まってはいないけれど、サブに何かやれることがあるか」といえば現実的にないと思います。ただ、例えばA事業を本業でやっていて、これを手前どもの信金がお手伝いさせていただいている。そしてBという事業をやるときに都銀さんなり大きな地銀さんなりがどんとそこに融資をしたけれど、結局B事業はうまくいかず、返済一本で後は知らないやと。そうなった時には資金残高としてはわれわれはサブですが、事実上うちがメインということになっちゃう。さっきの渡辺さんの話じゃないですが「いや、残高メインだからA銀行さんがやってくださいよ」と、メインバンクのあるべきことみたいなことを僕らが一生懸命主張しても意味がない。ハネを受けているということは事実上うちがメインなんじゃないのか。そうであればやっていこうというのがわれわれのスタンスです。

橋本:現実問題として本部に缶詰めになっていて出るに出られないとか、あるいは銀行の方針でこれまで企業支援なんてやったことがないという人達もいると思います。何をしたらいいのか分からないという人たちがまずできること、具体的な行動で何がありますか。

渡辺:新商品開発とかビジネスマッチングとかいろんな手段があると思いますが、コロナで新しいソリューション、もしくはウルトラC的な何かがあるのかといったら、ほぼないと思っています。それよりは今ある物事を裏から見るということ自体が一つの方法だと思います。企業支援が元々コストだという考え方も、先ほどご紹介したように「もしかしたら裏返しにすると合理的なんじゃないか」と見方を変えるとどうなるか、非常に興味深い。若い方に一言お伝えするのであれば、新商品がどのように売れるかを考える一方、売れない理由や私自身が買わない理由を常に考えています。そのほうがその商品開発、もしくは会社の事業の問題点や改善点がクリアに見つかるので。1つのヒントになればと。

橋本:伊藤さんはいかがですか。

伊藤:机仕事が多くて、なかなか現場に行けない方もいらっしゃると思います。そういうときにはデュポンモデルはROAだとか、ああいった分解式で要注意先や破綻懸念先を、本当に単純に並べて見てみる。例えば、小売業は総資産回転率で粗利を稼いでいくわけですが、総資産回転率が下がっているにもかかわらず、売上高経常利益率が上がっている。小売業のビジネスモデルとしてはあれっというようなものが出ていると。そういうところを深掘りしていくと粉飾決算をやっていたり、いろんなことが見えてきます。建設業は逆で、一件一件の粗利を取って利益で稼ぎますが、それが下がっているにもかかわらず売上高、完成工事高総資本回転率が上がっていっている。それで正常先になっていくのをあれと気づく。そういう何かから始めていただくことだと思います。

橋本:つまり、建設業は一般的にはこういうふうに仕事の受注があってお金が入ってくるとか、そういう座学的なところからでも全然問題ないのですか。

伊藤:全く問題ない。

橋本:業種ごとに特性があって、日銭が入ってくるとか、あるいはまとまったお金で入ってくるとか。さきほど渡辺さんは決算書の見方の話をされていましたけれども、どういう意味でお話しされていましたか。

渡辺:例えば銀行が仮に粉飾決算を見抜いたとして、それを悪だと言っても事業者支援、経営改善にとってプラスに働くとは限らないという意味だと思うんです。私自身も過去の経験でまあこれぐらいはあるなということもありますし。それをどう換金し、資金繰りを支えるネタにしていくかを考えない限り、現実的に会社は良くなっていかない。なので、それを見抜いて悪だと言ったところで企業の収益が上がったり経営が良くなったりしていくのかというとそれは少し違うと思います。見抜くなと言っているわけではないし、事業者支援をやられる方は、実態BSのようなものを頭の片隅で計算しながらやるのは当たり前の話だと思うんですけれども。そこから次の手に動けなければ、本当の支援にはつながらないだろうなと思います。

橋本:現実問題としてコロナで債務超過の小規模事業者の方が相当多いと思います。いくら思いや志があっても、時間も人手も足りない。本当はやってあげたくても100%は難しい現状の中で、応急的な処置で「この段階ではまずはここまで」といったような支援の工夫はあるんですか。

渡辺:おそらく最も議論が曖昧なところの一つなんでしょうけれど、今言われているのは資本性劣後ローンでしょうか。取りあえず時間を稼いでまた考えようよという世界。いい、悪いはありますが。

伊藤:例えば既存の債務をDDSするとき、実質債務超過の範囲内というのがあるわけです。理屈で言うと実質債務超過分を疑似資本にするから純資産がプラマイゼロになり、ニューマネーに入れられるというだけ。10年、15年で払わなければならない債務が、コロナで弱っている会社が生み出すキャッシュフローとイコールになるのか。この問題が必ず出てくると思います。債務超過にこだわるとどうしてもそこに併せて作るような形になっていく。でも債務超過以上にDDSすれば、言い方によっては過剰支援となってしまう。ちょっとひっくり返せば劣後ローン。結局返し方の順番なんじゃないかという議論も成り立ちます。その辺の議論をしっかりしていかなければというのはありますね。

橋本:では先送りの道具としての資本性ローンが本当に支援なのかという点については、もう少し考えないといけないと。

伊藤:先延ばししたその間に何をやるか。与えられた時間で現実的に廃業や再編をしなくちゃいけないかもしれないですし。

橋本:会場からご意見やご質問はございますか。

日下:金融庁の日下です。伊藤さんは毎日事業者と向き合っていらっしゃるので、事業者の今の現状、それからカーブが谷底に落ちるような変化を感じていらっしゃると思います。残念ながら地域金融機関の経営者はまだそこまでの危機感を有していないというケースがあると思うんですが、具体的にどういうところを見ればそういった危機感が金融機関の職員に醸成されるのでしょうか。

伊藤:非常に月並みな話になってしまいますが、直接事業者さんとお話しする以外にないんじゃないかなと思います。話をするにしてもこちらが何かを提案するのではなくて、まずはしっかりと聞く。コロナになって、「今借りないで辞めたら300万の墓代が残るけれど、ゼロゼロ融資で3,000万借りるのとどちらがいいか」というお悩みを、聞き手に徹して丸一日相談にのる。これをしないとなかなか危機感を醸成するのは厳しいのではないでしょうか。

日下:これまでは融資することに精いっぱいでしたが、一息ついた段階で企業としっかりと対話をし、話を聞き、今後どうするかを話し合う。その時間を取らなければいけないということですね。

伊藤:それに限ると思います。

日下:ありがとうございます。

橋本:最後にわたしからもお伺いします。中小企業の話を伺っていると、事業承継において、兄弟で口をきかないとか、父と子がものすごく仲が悪くてといったような家族のリアルな実像が浮かんできます。これこそが経営にとって非常に重い課題だったりするわけですが、どのように動かれていますか。

伊藤:承継も廃業も再生も含めて、実際そういうことは多いです。事業承継なんかは一族でぐちゃぐちゃになったりしているケースもある。その舞台、その配役の中で自分がどんなキャラクターでいるのかが実は一番大事なんです。例えば家族の中でけんかされているときに、インテリな伊藤貢作なのか、がらっぱちでいけいけで「こいつ大丈夫か」というキャラの伊藤貢作なのか。最初の一歩から議論が始まりますから、正直僕はそれ一点とも言えます。心情的な問題なので、そこを間違ったらいくら理屈を言ってもどうしようもない。特にコロナの間は非常にそういう相談が多いです。

渡辺:中小企業は家族の問題に尽きますから、そのバランスは非常によく見ます。それが読み切れなければ、結局どこにポイントがあるのかということが見極められないのではないかと思います。

橋本:皆さんの知見や知性を融通し合い、現場でしっかりと実践していくことが、このコロナ禍においては非常に大事だと思います。ありがとうございました。

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