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【変化への対応力を磨く:自衛隊式マネジメントから学び、図上演習で進む】第6回:統御について(前編)
〜チームを動かす理想のリーダー像〜

合同会社セルフディフェンスパートナーズ コラム

Jライブラリーをご覧の皆様、こんにちは!

「部下がなかなか思うように動いてくれない」「チームがバラバラで一体感がない」——。

リーダーとして、このような悩みを抱えている方は少なくないのではないでしょうか?今回は、自衛隊のマネジメント概念「統率」を構成する重要な要素の一つ、「統御」について、その本質を掘り下げていきたいと思います。

自衛隊において「統御」とは、リーダーがメンバー一人ひとりに動機付けを行い、その能力を最大限に発揮させることで、チームが一丸となって業務目標を忠実かつ積極的に達成している状態を指します。統御が良好に行われている状態は、指揮を効果的に実行するための強固な基盤となります。

統御を確立するためにリーダーに求められる要件を簡潔にまとめると、以下のようになります。

リーダーは、チームのやる気を引き出し、団結の中心となり、メンバーが心から目標達成を目指せるように働きかける存在です。

そのために、リーダー自身は高い倫理観とスキルを磨き、強い責任感と確固たる意志を持って、率先して行動することが求められます。

そして、常に公正で誠実な態度で部下に接し、模範的な存在となることで、尊敬と信頼を獲得しなければなりません。困難な状況に直面した際には、冷静かつ毅然とした態度で立ち向かい、チームを前進させる原動力となることが不可欠です。

あなたにとっての「理想のリーダー像」とは?

いかがでしょうか?このリーダー像は、皆さんが思い描く「理想のリーダー」に近いのではないでしょうか。

リーダーシップには様々なスタイルがありますが、メンバーから尊敬と信頼を得るためには、リーダー自身の行動と資質が不可欠です。

例えば、リーダーは業務を遂行する上で、常に中核的な存在であり、チーム団結の中心でなければなりません。このため、自ら進んで高い倫理観を持ち、知識やスキルを磨く必要があります。強い責任感と確固たる意志を持って、率先して行動し、職務をやり遂げる姿勢は、メンバーに安心感と「この人についていきたい」という気持ちを生み出します。

また、部下に対しては、公正で私情を挟まず、誠実に接することが求められます。リーダーは、特定のメンバーをひいきしたり、感情的に判断したりせず、常に公平・公正な態度を貫くことで、チーム全体の信頼を獲得します。このような模範的な存在として振る舞うことが、メンバーの尊敬と信頼につながるのです。

組織を蝕む「倫理観の欠如」

このリーダーに求められるいくつかの要件のうち、「高い倫理観」が欠如するとどうなるのか、ビッグモーターの事例を紹介します。

ビッグモーターの一連の不祥事は、組織における倫理観の欠如がどのような悲劇を招くかを示す、極めて象徴的な事例です。経営陣や一部のリーダーが短期的な利益を追求するあまり、従業員に不必要な車の修理や保険金の不正請求といった不正行為を強要しました。この行為は、結果として顧客からの信頼を完全に失墜させ、組織全体の存続すら危ぶまれる事態に発展しました。

リーダーの不誠実な行動は、メンバーの不信感を招き、チームの統御を完全に失わせる危険性があります。目標達成のためであれば何をしてもいいという考えは、最終的に組織全体の崩壊を招くことになりかねません。統御は、単に業務目標を達成させるだけでなく、組織全体の倫理観と道徳性を維持する上でも不可欠な要素です。

倫理観が組織を動かす原動力となるのはなぜか?

なぜ、リーダーの高い倫理観が組織を動かす原動力となるのでしょうか?

倫理観とは、単に法律やルールを守ることではありません。それは、正しいことを正しいと判断し、実行する心の指針です。リーダーがこの指針を明確にし、自ら率先して行動することで、メンバーは「このリーダーと一緒なら、正しい道を歩める」という安心感と信頼感を抱きます。

この信頼感が、チームの団結力を生み出し、メンバーの内発的な動機付けにつながります。結果として、メンバーは自律的に考え、行動するようになり、リーダーがいなくとも、自ら成長し続ける強い組織が生まれるのです。

【まとめ】
統御を成功させる鍵は、リーダーがメンバーから尊敬と信頼を得るための「揺るぎない覚悟」を持つことです。その覚悟を日々の行動に落とし込むために、次の3つを常に意識してみてください。
  • 高い倫理観と公正さを保つ
  • 率先して行動する
  • 困難時こそ冷静かつ毅然と望む

そして、その基盤となるのが、リーダー自身が理想のリーダー像を実践することです。

次回は、統御のもう一つの柱である「部下への動機付け」について、具体的なアプローチを掘り下げていきたいと思います。お楽しみに。

※本内容の引用・転載を禁止します。

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