〔変化をチャンスに 〜 変化を捉える視点と思考 〜〕
第64回:ZOZOFIT
コラム
<はじめに>
最近、身体を鍛えている。昨年後半は減量期と位置づけて体重をだいぶ落としたが、今年から増量期に移行した。筋トレを中心にした結果、確かに筋肉量は少しずつ増えている。悩ましいのは、それ以外のものも(大幅に)増えていることか(笑)。
ダイエットに取り組む人は自分の体型の変化を気にする。当然だろう。だが、身体の変化はゆっくりなので、毎日のように鏡を眺めていても、どこがどのくらい減ったかはすぐには分からない。(私の場合、減量期に1年ほどかけたので、変化はきわめてゆっくりだった)
筋トレをする人も自分の体型の変化を気にする。胸、背中、肩、腕、足、などなど。部位ごとにどのくらい筋肉が成長したのか気になるところだが、筋肉の成長もゆっくりなので、変化はなかなか分からない。(私は筋肉がつくのが遅いのか、増量期に入っても日々の変化は微小のようだ。歳のせいだろうか、笑)
簡単に身体の変化を把握する方法があればいいのに。
と思っていたら、そんなサービスが登場したと聞いた。マジか!
ZOZOFITが体型の変化を分析してくれるという。本連載でもZOZOSUIT、ZOZOMAT(いずれも第5回)、ZOZOGLASS(第17回)で紹介したが、ZOZOFITはその後継サービスだろうか。
今回はZOZOFITの紹介とともに、ZOZOが提供する計測技術にまつわるアレコレを、独自の視点から考察してみたい。
<ZOZOFIT登場>
2022年4月、ZOZOFIT登場のニュースが流れた。ワークアウトの進捗をサポートするボディマネジメントサービスを提供するという内容だった。
特にZOZOSUITを活用するという文面が興味を惹いた。ZOZOSUITがスマホのカメラを使って身体のサイズを細かく測る採寸スーツであることは本連載の第5回で紹介した。ZOZOFITは、ZOZOSUITを活用して、体型を詳細に3D計測することで、ワークアウトの進捗を把握するサービスのようだ。
ZOZOの計測技術の取り組みは面白い。初期の採寸用ボディスーツ「ZOZOSUIT」(2017年発表)は配布を中止しているが、その後継である3D計測用ボディスーツ「ZOZOSUIT」(2020年発表)の存在は知っていた。その後も計測技術を提供し、新たなサービスを共創するパートナー企業を募集してきたほか、計測テクノロジーの技術ライセンスを販売してきたという。
なるほど。
ZOZOFITも、同社の計測技術の応用のひとつと考えると納得感がある。
簡単にZOZOFITの紹介をしてみよう。以下はプレスリリースからの引用である。
ZOZOFITは、ジムや自宅にいながら手軽で高精度な3Dボディースキャンおよび計測データのトラッキングを可能にするサービスです。ZOZOSUITを着用し、スーツ全体に施されたドットマーカーを、スマートフォン上のZOZOFITの専用アプリとカメラで360度撮影することで、高精度な体型計測が可能です。計測した結果を元に、精緻な身体の3Dモデルを生成することで、ワークアウトの成果が可視化され、トレーニング強化が必要な部位の見極めなどにも役立てることができます。
(*) https://corp.zozo.com/news/20220427-20359/
お手軽な3D身体スキャンと言えばいいだろうか。通常、高精度な3D身体スキャンには大きな機械が必要だが、ZOZOFITはZOZOSUITとスマホだけで(*)それを可能にするという。
※2025年5月現在、ZOZOSUITを着用しておこなう計測に加え、サブスクリプションモデルでZOZOSUITを使用しない計測の2種類を提供中。


体型の変化を詳細に把握したいというニーズは多い。冒頭の通り、ダイエットであれ、筋トレであれ、長期間にわたる身体的サイズの推移を記録・可視化できることは大きな励みになるだろう(自分が体験してきただけに、共感できる、笑)。しかも、専門的な機材を必要とせず、自分で手軽にチェックできるのは嬉しい。
<デジタルが可能にしたもの>
ZOZOの計測技術は面白い。ZOZOSUIT、ZOZOMAT、ZOZOGLASSは、いずれも「スマホのカメラ」と「画像分析+計測技術」の組み合わせにより、一人ひとりに最適な商品を推奨することを可能にした。しかも、非デジタル分野の商品(服、靴、化粧品)を対象に、店頭での購入が当たり前とされてきたものを、オンラインで買えるようにしたことに驚いた。
ZOZOFITは身体的サイズの変化を記録・可視化する。商品のオススメではなく、一人ひとりにあわせた身体のサポートを目的とするという点でこれまでのサービスとは異なるが、これまでの技術を応用し、ZOZOSUITを活かして事業領域を広げたことは注目に値する。
デジタルはさまざまな変化をもたらした。これらの変化の捉え方という面でZOZOのサービスは秀逸である。例えば、ZOZOSUIT、ZOZOMAT、ZOZOGLASSはカメラをもちいた「計測」から「パーソナライズ(記事では顕名モデルとして解説)」を経て、個客ひとりひとりと最適な商品のマッチングを可能にした。一方、ZOZOFITは身体の変化を「可視化」することで「時系列分析」を可能にし、個客一人ひとりのワークアウトの進捗をサポートすることを目指している、とも言える。
ZOZOFITは面白そうだ。私も、早速使ってみたい。と思ったら、ZOZOFITは米国でのみ提供されているようだ。
あれ?日本では使えないのだろうか…
うーん。残念(涙)。
<終わりに>
本稿は、新たなテーマで事例分析をしてみた。ZOZOFITを始めとするZOZOの計測技術を応用したサービスで注目したい点は「変化の捉え方」である。本文でも記載したが、
「計測」、「パーソナライズ」、「可視化」、「時系列分析」
など、デジタルが可能にした「変化」をビジネスチャンスと捉えているところが興味深い。
本連載では「未来志向」の考え方を紹介している。デジタル時代のイノベーションを次の3つのステップに分解して理解・分析するための思考法だ。
・変化を捉える
・未来を描く
・仕組みを創る
ZOZOの挑戦は未来志向の視点からも理にかなっている。次々に発表される新たなサービスに興味津々である。個々のサービスの成否ではなく、社会的かつ大局的な構造変化を妄想するのが楽しい。今後の展開が楽しみだ。
※本内容の引用・転載を禁止します。