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【変化への対応力を磨く:自衛隊式マネジメントから学び、図上演習で進む】第10回:思考の独立性と、行動への積極性

合同会社セルフディフェンスパートナーズ コラム

Jライブラリーをご覧の皆様、こんにちは。

これまで本コラムでは、自衛隊におけるリーダーシップを軸に、「指揮」「統御」「指揮のサイクル」についてご紹介してきました。
状況判断から意思決定、計画、命令、監督・指導に至るまで、リーダーが果たすべき役割を順を追って見てきましたが、今回は、それらを現場で実際に機能させるために欠かせない考え方である「思考の独立性」と「行動への積極性」についてお話しします。

「思考の独立性」に対する誤解

「思考の独立性」という考え方は、自衛隊では「独断」という言葉で表現されます。
一般的に「独断」と聞くと、
・上司や周囲の意見を聞かずに勝手に決めること
・独りよがりな判断
といった、否定的なイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。

しかし、自衛隊において「独断」は、そのような意味では使われていません。
自衛隊における独断とは、組織を停滞させないための、極めて前向きな行動原理です。

自衛隊における独断の定義

自衛隊における独断とは、
「上司と連絡が取れない状況に陥っても、何もせずに連絡・指示が来るのを待つのではなく、自らの判断で、最善と思われる行動を積極的に実行すること」
を指します。

独断とは、判断の放棄とは正反対の行為です。「判断材料が揃うまで待つ」のではなく、限られた情報の中で目的に立ち返り、自分の頭で考え、行動する姿勢を意味します。もちろん、上司と連絡が取れるようになれば、速やかに状況を報告し、指示を仰ぐことが前提となります。
ここで重要になるのが、「思考の独立性」と「活動への積極性」という二つの要素です。

思考の独立性とは何か

思考の独立性とは、上司の指示や前例に依存することなく、「この状況で、任務の目的を達成するために何をすべきか」を自ら考える力です。
自衛隊では、階級による指揮命令系統が明確に定められていますが、それと同時に、各メンバーが主体的に考えることを強く求められます。
なぜなら、現場では常に上司からの具体的な指示が間に合うとは限らないからです。
思考の独立性とは、決して勝手な解釈ではありません。目的と状況に基づいて判断する力なのです。

活動への積極性とは何か

もう一つの柱が、「活動への積極性」です。これは「積極的に前に出る」という意味ではありません。活動への積極性とは、「判断を先送りせず、必要な行動を起こす姿勢」を指します。
上司と連絡が取れない、判断に迷う――。そうした状況で、「情報がそろうまで何もしない」という選択をしてしまうことが、最も大きなリスクになります。
状況に応じて、その時点で考えうる最善の策を実行することが求められるのです。

独断と指揮のプロセスとの関係

独断は、指揮官だけが行う特別な行為ではありません。むしろ、良い指揮官ほど、部下が独断できる環境を整えています。
弊社書籍『リーダーの技術』でも、「リーダーの役割は、部下が正しく独断できるようにすること」が重要であると述べています。

そのためには、
 ・業務の目的を明確に示す
 ・判断の基準を共有する
 ・結果だけでなく、判断の過程を見る
といった取り組みが欠かせません。

これにより、部下は「指示待ち」ではなく、「目的志向」で行動できるようになります。

企業における独断の重要性

企業活動においても、独断は極めて重要な意味を持ちます。トラブル対応、顧客クレーム、システム障害など、現場では迅速な判断が求められる場面が数多く存在します。

上司の判断を仰ぐいとまがないからといって状況を放置してしまい、
 ・被害が拡大する
 ・顧客の信頼を失う
 ・現場が混乱する
といった事態につながることは、決して珍しくありません。

独断とは、「自分が責任を負う覚悟を持って動くこと」であり、組織の対応力を高めるための重要な行動原理です。

まとめ

指示がないから動かないのではなく、目的に立ち返り、自ら考え、最善を尽くす。
それこそが、『リーダーの技術』で示している独断の本質です。

リーダーが思考を止めず、行動を止めない姿勢を持ち、部下にもそれを求めることで、組織は環境の変化や不測の事態にも柔軟に対応できるようになります。

次回は、こうした独断が特に重要となる「危機管理」について、さらに踏み込んでご紹介します。

※本内容の引用・転載を禁止します。

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