Jライブラリー

第1部 パネルディスカッション

ジンテック セミナー

地域の課題を克服!地域課題解決支援室による
『知見結集』の取組み

【パネリスト】
RCG 代表取締役 天間 幸生 氏
リンクス人事コンサルティング 執行役員 特定社会保険労務士 薗田 直子 氏
荘内銀行 営業推進部 コンサルティング営業室 シニアマネージャー 渡邊 浩文 氏

【モデレーター】
共同通信社 編集委員 橋本 卓典 氏


橋本:最新作で取り組んだテーマの一つに「ネットワークで知性をどうやって集めるのか」というものがあります。なにが組織、あるいは地域の中で知性を滞らせているのか、そしてなぜ知性が交流するのか。スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター氏は「われわれは仲良し同士で群れている。その中では知性が深まるが、その一方で新しい知性が獲得できない」と言っています。例えばコロナに際して、今までどおりの考え方ややり方では通用しないのは一目瞭然ですが、こういった状況ではいつも群れている仲間同士の知性を持ち寄るだけでなく、少し離れたところから新しい知見を集め、臨んでいくしかないんだろうと思います。もう一つのテーマは「地域金融において資金繰りの支援だけで本当に事業者を支えることができるんだろうか」というものです。資金繰り支援は非常に重要ですが、企業支援とはそれだけではないのではないか。もっと広範に企業を支えていくための知見、あるいは知性があるべきではないのか。本日のセミナーはその辺りを軸に進めていければと考えています。

荘内銀行 営業推進部 コンサルティング営業室 シニアマネージャー 渡邊浩文氏
集合知で課題解決をするプロフェッショナル集団

私が所属する営業推進部 コンサルティング営業室には現在24名所属しています。その中で、私は主に事業性評価活動の統括および推進、新産業分野・成長分野の推進管理をしています。コンサルティング営業室のメンバーは全員出向経験があり、それぞれ一芸に秀でた能力を持つ集団です。主な出向先は公的機関、県の外郭団体、大学のような教育機関です。また、東北経済産業局との人事交流などもさせていただいており、現在4組目の方々に銀行に来ていただいています。さらに、外部団体である東北経済産業局、山形県庁などで部長職を歴任した方にも理事として転籍していただいています。これだけの方々がいらっしゃいますので、それぞれのバックグラウンドを有効活用し、勝ち負けではない、真に進展するような議論をしながら、お客さまの課題を集合知で解決しています。また、事業性評価においても財務だけに依存しない議論を展開しています。

企業の支援数は右肩上がり

平成27年からの企業支援の推移をみていきます。テーマは創業に始まり、経営改善、販路開拓、企業コーポレート・アイデンティティーなど11項目に分類しています。私どもはリテールに強い銀行ですから、FP分野や相続分野が多いんですが、近年は経営課題について、例えば補助金の申請や販路開拓といったご相談が非常に増えている傾向にあります。そして、平成27年以降、全ての支援テーマが右肩上がりになっています。これは、現場がお客さまのことを知ろうとし、経営課題をしっかりと聞いてくるような機運や情勢ができているということの表れだと認識しています。

支援事例1 大商金山牧場

デザイン経営を土台にしたコーポレート・アイデンティティー構築の事例です。創業者から引き継ぎ新社長となる息子さんから「われわれの代では新たな経営方針を作りたい」というご相談をいただきました。この企業は元々は食肉の卸から始まっていましたが、新社長はさらにその先、牧場経営を基盤にした直営飲食店や通信販売を視野に入れていて、食の総合商社として海外への展開も考えておられました。ご相談に対して東北芸術工科大学の企画構想学科の先生に相談し、コーポレート・アイデンティティーのご提案をしました。「コーポレート・アイデンティティーとは何ですか」とよく質問されますが、まずは自社の創業から現在までの過去を振り返ること。そして、現在できていることを確認すること。そして一番重要なことは自社が将来の社会に約束すること。この3つを経営者と従業員が一緒に考え、経営のベクトルを合わせていく中で企業のアイデンティティ―がクリアになっていきます。変革を進めた2年の間には、株式会社大商から株式会社大商金山牧場に社名変更をされました。名前のとおり、ぱっと見た感じで食に関わっている、牧場を経営されていることが分かるような企業に変化され、合わせて「米の娘ぶた」というブランド豚によってブランド推進に成功。結果として売り上げが向上し、会社全体の機運も上がりました。

支援事例2 RPAの導入

2つ目は製造業でのRPAの導入事例です。ロボティクス・プロセス・オートメーション、最近よく聞く言葉だと思います。ロボティクスというと工場の自動化を思い描きますが、今回は財務のロボティクス化に取組みました。A社は、IHI等と取引きがあり、航空機の部品や金属の精密な金型・部品を作ることが得意な企業です。そこからもう一歩深く入り込んでみると、生産管理をコンピューターのネットワークで行っているところにこの企業の凄さがありました。自動で計画を作り、進捗を組み替え、事績管理を行うネットワークを自社開発していて、例えばあるラインに新しい仕事が入ってきた場合に「何時何分にこの装置は空いているから、新しく受けた仕事は何日後の何時何分までに仕上げることが可能」ということをコンピューターで管理ができます。その企業からのご相談は、この生産管理のコンピューターに財務管理のシステムを合体させ、リアルタイムで製造原価管理、1日ごとの収支管理を反映したいというものでした。そこで、あさひ会計という会計事務所のロボット研究所と相談し、生産管理と財務管理を連結させるRPAの導入を提案し、現在、作業をしています。なぜそんな提案ができるのかと疑問を抱かれる方もいらっしゃると思いますが、これからは銀行員も専門知識を持つ必要に迫られてきています。お客さまよりも一歩先に行かなければお客さまのお役に立てない時代が今来ているのです。

銀行員で、科学技術を知り、人間力がある

例えば公的な機関に出向し、一定期間、科学技術分野について学んできたとします。そうすると製造業のお客さまが話している内容が理解できるようになります。理系分野の話を文系の方々に翻訳ができるようになると、様々なことが生まれてくる。さらにデザイン系を合わせ、理系・文系・デザイン系の3つジャンルの懸け橋ができる翻訳家になれれば、面白い銀行員になれると思います。科学技術×人間力=テックバンカーという公式をよくお伝えしていますが、この公式の前提は銀行員であること。銀行員であり、科学技術を知り、そして人間力がある。よって、テックバンカーにトランスフォーメーションできる。科学技術を農業に変えればアグリバンカーになりますね。どんな付加価値を持つかはその人次第だと思います。

企業の総合診断医である銀行員だからこそできること

これからは専門知識を持っていないと、お客さまの課題解決のお役に立つのは難しい。逆にいえば、専門知識の習得を乗り越えることによって、お客さまとの仕事が絶対に楽しくなってきます。一つ専門性を身に付ければ、さらに新たな専門性、例えば技術を知った上で農業分野に行けば、農工連携のような専門分野を呼ぶことができる。そう話をすると「技術が分かる人間を連れてくればいいんじゃないか」と思われるかもしれませんが、あくまでも企業の総合診断医である銀行員であることがベースです。銀行員として企業全体を俯瞰して見る力、これがあって初めて専門性が生きてくる。そうすると、地域の付加価値を考えることができる銀行員が生まれ、地域の魅力や課題がクリアに見えてきます。もちろん地域の魅力や課題は時代によって変わっていきますが、「今こんなふうに変わってきているから、これが必要だ」と把握する力が備わってくると、地域のための仕事が見えてきます。「目の前の数字で手一杯なのに、専門的な勉強ができるか」と思っている方もいるかもしれません。でも、専門性を身に付けて、お客さまの一歩先の情報やノウハウを持つと仕事が面白くなるのです。目の前の損得ではなく、あくまでもお客さまや地域に目を向け「こんなことをやって、こんなふうに役に立とう」と決めたら、それをやり抜くことが、今、全国にいる銀行員に必要なことだと思います。

リンクス人事コンサルティング 執行役員 特定社会保険労務士 薗田直子氏
人と組織を整えなければ企業は前に進めない

群馬県を中心に、中小企業の経営課題を人事・労務の視点から解決する支援をしています。一昔前までは、社労士といえば法律的に厳しいことばかり言って「社労士が入るとうまくいかない」というエピソードもいろいろと伺いましたが、今、企業は人と組織をどうやって整えていくかを考えなければ前に進めない時代です。今日は企業の経営課題を人事の視点で考えたときに、制度ではなく“組織”をどうやって作っていくのか。地域の中小企業と向き合い続けてきたからこそ見える今の課題、具体的な課題解決策についてお話ししたいと思います。

経営者の考えを実行する人と仕組みがないのが中小企業

中小企業あるあるですが、社内に経営者と経営について話しができる方がほとんどいないんですね。管理職は大企業のように選抜されたわけではなく、長くいるから管理職。「指示されたことしかやらないんだよね」という声が非常に多い。昨日もある経営者と話していたら、「社長の俺の言うことを、ノーとも言わないでスルーするんだよね」と言っていて、指示されたことさえやらない社員も多くいるわけです。経営者が考えていることを実行する人と仕組みがないのが中小企業だと思います。また、中小企業はジョブローテーションがほとんどありません。1つの部署に配属されたら、そのままずっと10年20年。人も情報も動かないので、非常に属人化されやすい。その辺りが人事面で見た中小企業ではないかと思っています。

本当の課題は目に見えない部分にある

そんな中で経営課題を解決しようとしたときに、いくら精度の高いハード、仕組みや制度を入れたとしても前に進みません。時間と費用をかけて制度を整えてもうまく動かない。中小企業は人で動いているので、そこにいる一人一人のモチベーションだったり、その人の能力をいかに発揮させるかだったり、従業員同士、従業員と経営者の関係性にアプローチをしないと制度は機能しないんですね。ご相談の入り口のほとんどは法的な解釈や法律問題、もしくは制度を整えたいといったところですが、見えている課題をハード面だけで対応しても、一時的に良くなるだけで、もぐらたたきのように次の課題が出てきてしまいます。本当に問題なのはそこではなくて、目に見えない部分なんです。その組織の風土、経営者と従業員の考え方の違い、関係性、そこに目を向けなければ進まない。そしてそこに目を向けるのは私たち支援者ではなく、経営者や働く人たちです。その企業の当事者が組織の現状に目を向け、変わりたい、変えていかなきゃいけないと思えるかどうか。他人に変われと言われたって、人は変わりません。ですから、中の人たちが変わろうと思っていけるようにアプローチをしています。

目的を理解し、腹落ちさせ、継続する

よくダイエットに例えてお話しするんですが、人から「ダイエットした方がいいよ」と言われるとカチンとはくるけれど、なかなかやろうと思わない。きれいになりたいとか、健康でいたいとか、その人の中から湧き出る思いがあって初めて、じゃあちょっと体重を何キロ減らしたいな、そのためにはウォーキングをしよう、食事制限をしようと行動、手段につながっていきます。ところが今、いろいろな企業で手段であるウォーキングや食事制限ばかりが先に来てしまっています。手段の目的化ですね。働き方改革も全く一緒です。国や会社がどうこうではなく、そこで働いている人たちにとってどんな目的があるのか。そこを腹落ちしないまま、長時間労働をなくしましょう、生産性を向上しましょうといっても、やらされ感満載でうまくはいきません。企業や組織の変革は、結局そこにいる一人一人の意識を変えない限りは前に進まないのです。そして、隣の人が成功した方法をそのまま取り入れてもうまくはいきません。人と一緒で、会社にはそれぞれの風土、今までの歴史や流れがあります。自社に合うやり方を継続することでこそ効果があるのであって、即効性はありません。制度や仕組みを入れて、しばらく経ってから効果が出てくる。だからこそ目的をしっかり理解し、腹落ちし続けることが重要です。

支援事例 グループ経営の整形外科クリニック 対話はきっかけづくり

接骨院、介護施設などを含めて全部で6拠点ある、創業20年、従業員数120人の整形外科クリニックの事例です。理事長先生のお悩みは、専門職として皆さん貢献してくれ、数字の責任も負ってくれるけれど、法人全体のことを考えてくれる人材がいないこと。介護施設や接骨院が隣にあっても興味がなく、その使い方すら職員は分からないという状況。そして、若い方から辞めてしまう慢性的な人手不足です。まずはじめに、見えている課題について「本当の原因はどこにあるか」を理事長先生とプロジェクトチームのリーダーの方たちとで話をし、仮説を立てました。その後、10名ほどいるリーダー職一人一人にインタビューを実施しました。「この先、いい組織を作りたいから皆さんの力を貸してください。皆さんの意見は共有しますが、誰が言ったかは決して言いません」という形で安心・安全の場を作り、今の組織の現状とこの先どういう組織でありたいかをインタビューすると、皆さん様々なことを語り始めました。リーダーになって不安を抱えていたり、どう対応したらいいか迷っていたり、売り上げについてジレンマがあったり、リーダーになって良かったことは全くないなど、いろんな意見が出ました。5年後の職場という観点では、皆さんから数字のことは出てこなくて「みんなが働きたい、自分も働き続けたい、そういった職場になりたい」といった声がたくさん出てきました。生の声はポジティブなこともネガティブなことも人の心に刺さりますからこの声を全て課題として見える化をし、それをベースに皆さんで対話をしていきます。対話をすると、みんなが同じことで悩んでいて、この組織を良くしたいという気持ちは一緒なんだということが共有され、未来に向かって同じ船に乗っている実感が得られます。対話はこのプロジェクトを自分事として、これから総力戦で改革していくためのきっかけづくりです。

リーダー達が自ら決め、実行し始める

この法人では1年弱かけ、法人全体と各部署のバリューを考えながら、チームビルディング、リーダーとしての視点や法人全体を見ることができる人材の育成など、組織開発と課題解決を一緒にやっていくような取組みをしました。その結果、リーダーたちが管理職の定義を「優れたリーダー、ヘッドコーチの役割とは、選手が信じることができる環境を作ること。皆さんをサポートすること」と定義し直し、経営計画発表会で宣言。その上で、グループ全体、法人全体で患者さんや利用者さんに「安心感と期待感を与えて元気づける」というバリューを打ち出しました。それと同時に働く職員の人たちにも挑戦できる環境、安心できる環境を作り、成長していただきながら人生も応援する、そんなメッセージを送りました。さらに、全員が同じ方向を向き、部署や施設のサービスが安心感や期待感を与える内容になっているかを毎月確認する“サポーター会議”の導入や職員の成長を後押しするだけではなく、一人一人の職員が患者さんや利用者さんに安心感や期待感を与えているかを確認するための1 on 1を開始。職員のいいところを互いに認め合うピアボーナスの仕組みを作るなど、リーダー職の方たちが、自分たちのバリューを実現するための取組みを、自分たちで決め、実行し始めました。

企業の成長は社員一人一人のエンゲージメントにかかっている

この先、働く一人一人の成長とエンゲージメントの向上がなければ、企業が生き残っていくのは難しいと思います。それこそが企業の成長につながるのです。ただ数字を上げるだけではなく、この会社で働く意味、この会社が社会に対して提供している価値、そして存在している意味を一人一人がしっかり腹落ちさせて動いていけるよう企業に対して変革のお手伝いをしています。

RCG 代表取締役 天間幸生氏
地域企業が海外との取引きを展開できる仕組みを作りたい

私どもRCGは今年2020年に会社を設立し、運営を開始しました。私は2つの地方銀行の銀行員としての経験があり、北海道銀行の社内ベンチャー制度を活用して2015年に地域商社を設立しました。今後の事業として地銀・地域商社が連携すれば、海外取引のネットワークが広がり、地域企業が海外との取引きを展開できるような仕組みを構想できると考え、このコロナの真っただ中に、会社を設立して事業を始めたところです。RCGの目的は「地域間連携に基づく地方の創成を目指す」というもので、具体的には海外販路拡大支援、国内販路拡大支援、地域商社事業拡大支援の3つの事業を考えていますが、本日は特に海外販路拡大支援についてお話しします。

海外展開の壁は言葉、物流、資金 そこに加わったコロナ禍

地域間連携に基づいた海外展開に向け、今年6月にみちのく銀行、山口フィナンシャルグループ、そして沖縄銀行と業務協定を結び、活動を開始しました。最初の事業構想ではもちろんコロナを予測していなかったので、コロナ禍によって海外渡航できない現状を前提に、オンラインで海外展開・進出できる仕組みを皆さんと相談しながら改めて考えていきました。とはいえ、コロナの前も中小企業にとって海外展開のハードルはとても高かった。一番の壁は言葉。それから物流。そして資金的な問題。そこにコロナで海外渡航もできないとなり、どんどん壁が高くなっていく中で、会社は立ち上げたものの海外展開はちょっと時間をかけようか、先送りにしようかという考えも浮かびましたが、海外展開支援をしっかりと続けていくべきだという皆さんからのアドバイスもあって、この状況において、取組みを進めています。

いつでも、どこでも、誰でも海外展開にチャレンジできる仕組みを作る

金融機関連携型では初めての海外企業ビジネスマッチングシステム「SELAS(セーラス)」のベータ版を11月にローンチする予定です。目指すのは中小企業の皆さん、さらには個人事業主や、副業の方も海外にチャレンジできる仕組みです。そして、地域金融機関が持つ中小企業とのリレーションシップの中で、社長のパーソナリティーまで把握しているような企業とがっぷり組み、二人三脚で海外展開に挑戦する仕組みの構築です。言葉や貿易手続きといった課題をワンストップで解決する仕組みを作り、インターネットを活用し、実際に行かなくてもいつでもどこでも誰でも海外展開にチャレンジができる。こういった環境をつくりだすことで、新規の取引きを可能にすることが重要だと考えています。

オンラインサロンとオンラインビジネスツアーで情報を共有する

SELASには2つの機能があります。1つ目がビジネスマッチング機能で、日本と海外のオンライン商談を進められます。中小企業の方がいきなり海外の企業とオンラインで面談をするのは難しいと思うので、まずは海外の情報を仕入れていただく仕組みとしてオンラインセミナー、そしてオンラインサロンを開設する予定です。オンラインサロンでは海外からのビジネス情報を発信していきます。例えばシンガポールでこういうものがはやっているとか、ベトナムでこういう日本の技術を欲しがっているといった情報が、掲示板のようなイメージでどんどん情報発信される。日本側からもこんなもの売れませんかとか、こういう技術をこんなところに応用できませんかと発信していく。双方向でビジネス情報を交換できるプラットフォームとしてのサロンです。また、オンラインビジネスツアーの構築も企画しています。海外渡航ができないといえども、海外のマーケティング調査は必要です。例えばコンビニでこういうものが幾らで売られていて、仕入れ先はどこといったようなオンライン版のビジネスツアーです。サイト内でリアルな情報がシェアされればされるほど「ベトナムのこの企業と商談してみたい」といった具体的な話がでてくるので、B to Bのビジネスマッチング機能の柱の一つになればと考えています。

日本、海外それぞれのサポーターを軸にチームで支援していく

SELASはデジタルプラットフォームと謳ってはいますが、日本サイドは地域企業と地域金融機関がしっかりと組んで、二人三脚で海外展開を目指し、海外サイドは現地企業と独自のパイプのあるコーディネーターを各国に配置しています。海外でビジネスを展開するには、現地の企業と信頼関係がある方々との連携が必須ですが、コーディネーター数は現在20人程度まで増えてきています。日本サイドでは金融機関とお客さま、海外サイドではコーディネーターと現地企業、それぞれの信頼関係がまずあって、その信頼関係の中でオンライン商談をする仕組みです。出会いの場のセットだけではビジネスは成立しませんから、それぞれの企業のサポーターである金融機関と海外コーディネーターの連携、RCGの貿易事務サポートなど、チームで日本の企業を応援し、商談成立を目指していきます。

小規模B to Cへも対応するセーラスショッピング

SELASのもう一つの機能はショッピングです。個人事業主や副業の方が作るアクセサリーをシンガポールの富裕層に販売するような、小規模なB to Cビジネスも対応できるセーラスショッピングという越境サイトを12月完成を目指して構築中です。重要なのは決済と物流ですが、決済はクレジットカードを中心とした電子媒体で、物流は日本郵政のEMSとタイアップをしながら、シンガポールから始めようと考えています。ただサイトを立ち上げただけでは買い物には至らないので、現地でしっかりと日本人会にお勧めするようなマーケティングの方法も考えています。

行かない海外進出の実績を積み上げていきたい

8月から実証実験を始めました。実験に参加しているのは、日本側は提携した山口フィナンシャルグループ、みちのく銀行、沖縄銀行、それに北海道銀行でリストアップした約50社、海外側はコーディネーター10名と海外企業10社です。現在、国別に進捗を追っていますが、かなりの手応えで、85%ぐらいが前に進んでいる実感があります。まだ2カ月しか経過していませんが、数日前に沖縄銀行から紹介されたユーグレナの案件が独占契約を結び、事業開始が決まりました。それ以外にも、りんごジュースやりんごシードルのサンプルが輸出されるなど、契約締結に向けてスタッフも銀行も非常に前向きかつ積極的に対応しています。海外に行かずに海外進出を始めるという、これまでの常識とは違う形での展開になっていますが、これが実現できたのは現地とのパイプを持つコーディネーターさんが、日本企業の支援に共感してくださり、この事業に参加してくださったおかげです。今はベトナムの最大のスーパー・コンビニのバイヤーと日本の企業がオンライン上で商談できる時代です。先ほどのユーグレナさんともロシア現地のドラッグストアの担当者とも私は一度もお会いしたことがありません。引き続き「行かない海外進出」の実績を積み上げ、広げていきたいと思っています。

橋本:渡邊さん、現場の方がこれから専門性を磨いていくためには、どのような働き方をしていったらよいでしょうか。

渡邊:一定レベルの専門性やノウハウを身に付けるためには、一定期間その業界に関係する機関などに出向してみるのが一番いいと思います。私どもの銀行では、出向を公募する制度があり、私も科学技術を学ぶために山形県の産業技術振興機構に出向させてもらいました。そのとき担当した専門分野は有機エレクトロニクスなんですが、3年勉強したおかげで、科学技術の知識や経験がついただけではなくて、科学者や研究者の方々、大学関係者、その機構を運営する県の方々とのつながりもでき、そこから地域の課題も見えてきました。例えばどんな技術を身に付ければ企業が世界に出ていけるかとか、知的財産を保有するための弁理士の先生が地方にはいないという課題なども見えてきます。また、補助金の拠出側を経験することによって拠出側の思惑が分かるようになり、お客さまが研究開発で補助金を取りたいときに、こんなプロジェクトを組めば採択されるだろうという感覚が身についたというようなこともありますね。

橋本:薗田さんは先ほどのピアボーナスのように様々なアプローチを勉強されていると思います。これから地域金融機関の方々が取引先企業の人事や労務担当者に対して、課題解決のためのソリューションを提案するには、どういうことが必要だと思われますか。

薗田:先ほどのピアボーナスは、様々な会社でのいろいろな取組み事例をご紹介していった中の一つです。手段や制度にはいろいろなノウハウがありますが、中小企業の方はどういうものがあるかも全く分からない状況なので。

橋本:他の事業者さんでの取組みを、別の事業者さんに先行事例として紹介するということですか。

薗田:そうです。いろいろな会社が独自の制度をやっていて、面白いものがたくさんあります。私も地域のいろいろな会社の取組みを知っていますが、金融機関の方はさらに隅々までネットワークがあると思います。こういう会社がこんな取組みをしてこんな結果があったとか、今こういうチャレンジしているけれどここが難しいみたいだ、という事例をお話しすると、皆さんとても興味を持たれます。

橋本:金融機関の中に各社の人事・労務の事例、知性や知見を集め、情報共有する場があったらいいですよね。

薗田:そういう場があればノウハウがたくさんたまりますね。

橋本:天間さん、金融機関が企業のサポーターになり、海外の現地には独自の販路を持つコーディネーターがいる。アナログというか、リレーションの世界だなと感じましたが、地域金融機関の方々がこういうものに参加する際に、どういう動きがあるとスムーズにいきますか。また、期待などがあれば教えてください。

天間:コロナ禍で5月、6月頃に緊急性が高かったのは資金繰りで、各金融機関もそれを最優先していたと思います。ところが山口フィナンシャルグループの海外戦略部の方から、最近は海外展開の相談が増えてきたと聞きました。おそらく、どうやって事業を継続していくかを考えるような局面に入ってきているんだと思います。とはいえ海外に渡航できないことで、海外展開は最初から諦めている。SELASおよびわれわれRCGの取組みは、海外展開のハードルを下げられるように考えられています。企業から今後の売り上げの伸ばし方について相談があったら、海外での販売、あるいは仕入れも含めた海外との取引きのチャンスについて話していただけたら嬉しいですね。英語が話せないのに海外なんてという方は結構多いんですが、今は売る気さえあれば海外展開へのチャレンジができるんだということを伝えていただきたいなと。

橋本:オンラインで海外に出られる時代なんだから、語学の不安があったとしても柔軟に考えてチャレンジしてほしいと。資金繰りの支援は当たり前のこととして、プラスアルファとして何ができるかが重要だということですね。

天間:そうですね。われわれは海外事業をやっていたのでこれまでも当たり前のようにオンラインを使っていましたが、コロナ禍によってみんながオンラインでの打ち合わせに慣れてきた。その延長線上として海外との取引きというのは大いにありだと思っています。

橋本:みなさま大変興味深いお話しが多く、勉強になりました。ありがとうございました。

←『可能性の地域金融』」へ戻る

pagetop