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何故、いま「自律」が求められているのか?
~未来の羅針盤・サイニック理論~(第2回)

ジンテック コラム

こんにちは、「し〜さん」こと竹林一です!

前回のコラムでは、イノベーションの本質は「新結合」であり、大切なのは組織の「縦糸(理念)」であるというお話をしました。今回は少し視点を広げて、「私たちは今、どのような時代の転換点に立っているのか?」という未来予測のお話をしたいと思います。

私が長年勤めたオムロンの創業者・立石一真氏は、1970年の大阪万博の年に「サイニック理論」という未来予測理論を発表しました 。これは科学・技術・社会の相互作用から未来を読み解く循環型理論です 。驚くべきは、その予測の精度とスピードです。立石氏がこの理論を発表したわずか4年後、1974年から、理論が予言した通りの「情報化社会」が幕を開けました 。当時はまだ大型コンピュータが主流で、個人が自由に情報を操るなど夢物語だった時代です。それにもかかわらず、2005年まで続く激動のIT時代の到来と、そこでのキャッシュレス化や多様な情報の普及を、年単位の精度でピタリと言い当てていたのです 。そして現在、この理論が示すロードマップは、2005年からの「最適化社会」という過渡期を経て、いよいよ大きな転換点を迎えています。それが、2025年から本格的に始まるとされる「自律社会」です。

「最適化社会」という長いトンネルを抜けて

サイニック理論では、1974年からの「情報化社会」を経て、2005年からは「最適化社会」に入ったとされています 。この「最適化」という言葉、ビジネスの現場では「効率化」や「コスト削減」と同じ意味で使われがちですが、理論の本来の意味は少し違います。

それは、工業化社会が追求してきた「効率・生産性」という物質的な価値観と、人間が本来持っている「精神的な豊かさ」という価値観との葛藤とバランスの調整期です 。この20年間、私たちは「利便性は上がったけれど、本当にこれで幸せなのか?」と問い続けてきました。環境問題(SDGs)への関心が高まったのも、この「最適化」の大きな流れの一つです。

そしていよいよ、その葛藤の先にある2025年から「自律社会」が始まります 。

「誰かのルール」から「自分の意志」へ

「自律社会」とは、一人ひとりが自らの律(ルール)に従って、自律的に幸福や価値を追い求める時代です 。これまでは「会社が言うから」「業界の常識だから」「偏差値が高いから」といった、外側の基準(他律)に合わせていれば正解に辿り着けました。

しかし、変化が激しく正解のないこれからの時代、もっとも重要な資産は、その人や組織が持つ「自分はどうありたいか」という意志(WILL)になります。

特にジンテック通信の読者の皆さんが携わっている金融やITの世界は、今まさに「仕組み」の提供から「体験や信頼」の提供へと価値がシフトしています。単なる「決済手段」や「データ」を提供するだけでなく、「その先にどんなワクワクする未来を作りたいか」という個人の自律的な想いが重なったとき、初めて本物のイノベーションが生まれるのです。

私の人生を変えた「やりたいこと100連発」

とはいえ、いきなり「自律しろ」「意志を持て」と言われても戸惑いますよね。そこで、私が2006年から欠かさず続けている具体的なトレーニングをご紹介します。それが「やりたいこと100連発」です。

毎年お正月に、自分がやりたいことを100個、ノートに書き出しています。
最初は「売上目標達成」や「資格を取る」といった、いわゆる「仕事(仕える事)」の目標ばかりが出てきて、30個目あたりでペンが止まるかもしれません。私もそうでした。

しかし、そこを乗り越えてひねり出したのは、「会いたい人10人」「山伏修行に行く」「本を出版する」といった、公私混同の入り混じった純粋な好奇心でした。

大事なのは、達成できるかどうかではありません。「自分は何を欲しているのか」を肩に力を入れず自由に100個書き出してみることで、脳の中に強力な検索アンテナが立つことなのです。

アンテナが立つと、日々の膨大なニュースやメールの中から、自分の「志(こころざし)」に関連するキーワードだけが不思議と目に飛び込んでくるようになります 。これが、自律的な生き方の第一歩です。実際、私も「出版したい」と書き続けていたら、本当にそのチャンスが巡ってきました。

おわりに:未来を創る「WILL」の力

未来は「予測」して待つものではなく、自律的な個人の「意志」によって「創り出す」ものです。

皆さんも、まずは一冊のノートを用意して、頭の中にある「やりたいこと」を書き出してみませんか?「自分は何がやりたいのか」を考えること。それが、2025年から始まった新しい時代の扉を開ける鍵になります。

※本内容の引用・転載を禁止します。

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