「嬉しい」と「楽しい」の決定的違い
〜自律型エンジンを回す心のスイッチ〜(第4回)
コラム
こんにちは、し〜さんです!
前回は、私の「15泊16日の東海道徒歩の旅」から生まれた、4つの「しごと(私事・仕事・志事・使事)」についてお話ししました。 組織の一員として果たすべき「仕事(仕える事)」の中に、自分自身の「志事(志す事)」をそっと忍ばせてみる。それだけで、明日からの景色が劇的に変わるというお話でした。
さて今回は、さらに一歩踏み込んで、私たちが新しい一歩を踏み出す時の「心のスイッチ」について考えてみたいと思います。
皆さんは最近、仕事やプライベートで「嬉しかったこと」と「楽しかったこと」をそれぞれ思い浮かべられますか?
「えっ、どっちも同じような意味じゃないの?」と思われるかもしれません。 一人ひとりが自らのルールに従って幸福を追い求める「自律社会」において、実はこの二つの言葉は、北極と南極くらい正反対の性質を持っているのです。
この違いを丁寧に紐解いていくと、自分が「誰かに動かされているのか(他律)」、それとも「自分の意志で動いているのか(自律)」が、面白いように見えてきます。
変化の激しい時代、最後に強いのは、自分の中に「自家発電できるエンジン」を持っている人です。
他人の評価を待つのではなく、自分の中の「楽しい」というスイッチをカチッと入れる。すると、自律型エンジンが勢いよく回り出し、放っておいても行動が止まらなくなるのです。
今日は、そんな心のスイッチの入れ方のお話をさせていただきます。
「嬉しい」は他人から与えられるリアクション
皆さんは、仕事をしていてどんな時に「嬉しい」と感じますか?
「上司から『よくやった』と褒められた」
「今月の営業目標を達成して表彰された」
「お客様から丁寧な感謝のメールをいただいた」
どれもビジネスパーソンとして最高に輝かしい瞬間ですし、日々のモチベーションになりますよね。
でも、この「嬉しい」という感情を少し客観的に観察してみてください。ここにはある共通点があります。
それは、すべて「外部からの刺激や評価(リアクション)」によって生まれている、ということです。
これは「他律的(他者の評価や基準に依存する)」な状態と言えます。
相手が褒めてくれるから嬉しい。成果が出たから嬉しい。
これは素晴らしいことですが、裏を返せば「誰も評価してくれないと動けない」「分かりやすいご褒美がないとやる気が出ない」という、受動的な姿勢を生み出すリスクも潜んでいます。
他人の評価という「追い風」を頼りに走っているだけでは、その風が止まった瞬間に、自分の足が止まってしまうのです。
「楽しい」は自分の中から湧き出る意志
一方で、「楽しい」はどうでしょうか。
「夢中でプレゼン資料を作っていたら、気がついたら夜になっていた」
「この複雑な課題をどう解決しようか、考えているだけでワクワクする」
「損得や評価なんて関係なく、このプロジェクトの行く末を自分の目で見てみたい」
どうでしょう、この「楽しい」の源泉は、他人の評価や周囲の視線ではなく、完全に自分自身の内側にありますよね。 これこそが、これからの時代に不可欠な「自律型(自分の意志で動く)」な状態です。
イノベーションは天才の発明ではなく、日々の延長線上にある発見や、個人の「こうありたい」という想いから始まります。 誰かに「やれ」と他律的に命令されたから動くのではなく、自分が内発的に「やりたい、面白そう」と感じて動き出す。 この「楽しい」という純粋な感情こそが、予期せぬ障害や組織の壁にぶつかっても決して折れない、強力な自律型エンジンの本質なのです。
「嬉しさ」を待つ人、「楽しさ」を創る人
新しい事業や仕組みづくりに携わっていると、よくこんな相談を耳にします。
「せっかく新しい企画を出したのに、会社が認めてくれない。だからもうやる気が出ません」と嘆く若手やマネージャーたちです。
これは典型的な、組織からの評価という「嬉しさ(他律)」という外部のスイッチを待っている状態です。
しかし、数々の困難を乗り越えて組織の中で新しい価値を生み出してきた「社内起業家」や「変革を生み出すリーダー」たちは違いました。
彼らは、たとえ周囲に「そんなの無理だ」「いくら儲かるんだ」とブレーキをかけられても、「いや、これ絶対に面白いから!」「自分が楽しいからやるんだ」と、内なる「楽しさ(自律)」という自前のスイッチを押して突き進んでいました。
ジンテック通信を読まれている皆さんはどうでしょうか。 もちろん、厳しいビジネスの世界ですから、他者からの評価や数字という「嬉しさ」も大切です。
でも、もし今の仕事に「やらされ感」を感じているなら、ほんの少しだけ主導権を自分に取り戻してみてください。
「どうすれば、この決められたオペレーションの中に自分なりのこだわりを入れられるか?」
「どうすれば、自分がこのプロセスを面白がれるか?」
他人からもらう「嬉しい」を待つ受動的な生き方から、自分の中に「楽しい」というエンジンを主体的に創り出す生き方へ。
この小さな視点のシフトが、自律社会を生き抜くための最強の武器になります。
おわりに:ワクワクを自家発電しよう
「嬉しい」は一瞬のきらめき(点)ですが、「楽しい」はどこまでも続いていくプロセス(線)です。
皆さんは日々、それぞれに、様々な仕事に向き合われていると思いますが、そのプロセスの中に、あなただけの「楽しい!」をぜひ忍ばせてみてください。 上がってきたアイデアを否定せず「どうすれば価値がさらに上がるか」をみんなで育てる「バリューアップ」の文化も、実はこの「みんなの“楽しい”というエンジンを潰さない環境」のことなのです。
仕事の中に自分の「楽しい」が重なったとき、日々の通常業務は、あなたにしかできないワクワクする「志事」へと生まれ変わります。
今日一日の仕事を振り返って、一度自分に問いかけてみてください。
「私は今、誰かの評価を待っている? それとも、自分から楽しんでいる?」
さあ、他人の目を離れて、あなただけの「楽しい」のスイッチを入れてみませんか?
※本内容の引用・転載を禁止します。
