忍者と武士とイノベーション
〜なぜ、新規事業でハレーションが起きるのか〜(第6回)
コラム
こんにちは、し〜さんです!
前回は、自社での成功体験にとらわれず、お客様の「99%のNO」から「現場が自律する仕組み」という本質的な価値を見出す「視座の転換」についてお話ししました。
さて今回は、その「自律」や「新しい価値づくり」を、実際の組織やチームでどう形にしていくかという「人」のお話です。
ビジネスの現場で「新規事業を起こせ」「イノベーションを推進しろ」と言われると、多くの人が「自分には天才的な発想力がないから無理だ」と身構えてしまいます。
あるいは、リーダーが1人でアイデア出しから計画、実行まで抱え込んでパンクしてしまう……なんて光景もよく見かけます。
でも、安心してください。 イノベーションは、決して「1人の天才」が起こすものではありません。 タイプや役割の異なる人間が集まり、その多様性の中でこそ生まれるものなのです。
私が長年お伝えし続けているのが、イノベーションに必要な「起・承・転・結」、4つのタイプの人材を活用するという考え方です。
今日は、あなたのチームにも必ずいる「忍者と武士」のお話を通じて、チームメイキングの面白さをお伝えします!
あなたの組織にいる「忍者」と「武士」
イノベーションに必要な「起承転結」、4つのタイプは、大きく2つの役割に分けることができます。
それが、「忍者(起・承)」と「武士(転・結)」です。
・【起・承 = 忍者】(クリエーションを担当) 「起」:ゼロから1を仕掛けるタイプ。妄想力に長けていて、10年先を見据えたワクワクする夢やアイデアを思いつくのが得意です。 「承」:「起」が思いついた突飛なアイデアを拾い上げ、「駅=街への入り口」のように、誰にでも分かりやすい新しい世界観(軸)をデザインします。
特徴:組織の外に出て、常識にとらわれず自由に動き回り、新しい価値を発見してくる「ゲリラ部隊(忍者)」です。
・【転・結 = 武士】(オペレーションを担当) 「転」:「起・承」の絵を“絵に描いた餅”にしないよう、目標に向けた具体的な計画を策定するロジカル派。「なぜ?」を繰り返して分析力を発揮します。 「結」:「転」が作った計画に基づいて、日々のオペレーションをきっちり、確実に実行・運用してくれます。
特徴:既存事業の信頼や品質(QCD)を死守し、組織を守り抜く「正規軍(武士)」です。
「起」が妄想し、「承」が世界観をつくり、「転」が計画を練り、「結」が現場で確実に実行する。 野山を駆け巡る「忍者」と、城を守る「武士」のバトンタッチがあって初めて、イノベーションは形になるのです。
なぜ、組織でハレーションが起きるのか?
ビジネスの現場でよく起こる「新規事業チームと既存事業チームの不和」。
これは一体なぜ起きるのでしょうか?
答えは簡単、「忍者の言葉で、武士に喋りかけているから」です。
自由に妄想する忍者(起・承)が、城を守る武士(転・結)に向かって「これからは枠にとらわれない時代だ! ワクワクしよう!」と叫んでも、武士からすれば「で、今年の売上と予算とリスクはどうなってるの?」となるのは当然です。
お互いの役割(言葉)が違うのに、自分の基準を押し付け合うから「イノベーションやろうと思ってハレーション」が起きてしまうのです。
歴史を振り返ってみても、日本を代表する偉大な企業は、この「忍者」と「武士」のコンビが完璧でした。
【ソニー】 妄想力で未来の技術を描く「忍者(起承)」の井深大さんと、それを世界的な事業計画へと落とし込んだ「武士(転結)」の盛田昭夫さん。
【ホンダ】 天才的な発想でエンジンを創り出す「忍者(起承)」の本田宗一郎さんと、「俺が経営を見るから好きなものを作れ」と城を固め抜いた「武士(転結)」の藤沢武夫さん。
日本のイノベーションの黄金期は、まさにこの「忍者」と「武士」の見事なタッグによって作られていたのです。
1人で全役を演じようとしない
多くの人が新規事業で潰れてしまう最大の原因は、「1人で忍者も武士もやろうとすること」です。
妄想が得意な忍者に「完璧な収支計画書」を求めればアイデアの芽は潰れますし、城を守るのが得意な武士に「何か面白い妄想をしろ」と求めれば大きなストレスになります。
大切なのは、自分がどちらのタイプかを自知し、相棒を探すことです。
「自分は妄想好きの『忍者』だから、しっかり城を固めてくれるロジカルな『武士』のパートナーを探そう」
「自分は頼れる『武士』だから、あいつのぶっ飛んだ妄想を形にする計画を立ててやろう」
そうやってお互いの強みを認め、補い合うことこそが、最強のチームメイキングです。
おわりに
あなたの周りを見渡してみてください。
野山を駆け巡って面白い種を持ってくる「忍者」と、城をがっちり守り、計画を着実に実行してくれる「武士」。
どちらが優れているかではなく、どちらも新しい未来を創るために不可欠な存在です。
今日、あなたのチームのメンバーの顔を思い浮かべて、一度考えてみてください。
「あの人は忍者? それとも頼もしい武士?」
さあ、1人で全部抱え込むのをやめて、あなたに足りない「最高の相棒」を探しに出かけてみてください。
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