Jライブラリー

忍者と武士とチームビルディング
〜テーマパークで見えた4つの景色〜(第7回)

竹林一 コラム

こんにちは、し〜さんです!

新しいビジネスや価値を生み出そうとするとき、組織の中には大きく分けて2つの役割が存在します。 外へ飛び出してゼロから新しい価値を発見してくる「忍者(クリエーション)」と、城を守り、日々の品質や運用を確実にやりきる「武士(オペレーション)」です。

実は、この「忍者」と「武士」が手を取り合い、力を合わせたときにこそ、本物のイノベーションが起きます。

でも、現実の職場ではどうでしょうか。 「細かいことばかり言う」「突拍子もないことばかり言って実行しない」と、言葉や視点がズレて、摩擦や衝突が起きてしまうことも多いのではないでしょうか。

では、どうすれば価値観の異なる「忍者」と「武士」が、心から認め合い、敬意を抱けるようになるのか。

実は、この違いを一瞬でお互いへの敬意に変えてしまう、とびきりユニークな実践法があります。 その舞台は、千葉県浦安市にある「あの有名なテーマパーク」です!

同じ場所を歩きながら、メンバーは一体何を見て、何を考えているのか? 今日は、チームの「視点の違い」を最大の強みに変えるヒントをお届けします。

忍者と武士が力を合わせると、イノベーションが起きる

組織で新しい価値を生み出すためには、「起・承・転・結」という4つの人材タイプが必要です。 これは大きく2つの役割に分けることができます。

・【忍者=クリエーション】:ゼロから1を妄想する「起」と、その世界観をデザインする「承」

・【武士=オペレーション】:計画を論理的に落とし込む「転」と、現場で確実にやりきる「結」

野山を駆ける「忍者(起・承)」と、城を守る「武士(転・結)」。 この2人が反発し合うのではなく、互いの強みを認め合って「最高のタッグ」を組んだとき、初めて組織に大きなイノベーションが生まれます。

とはいえ、頭では「多様性が大切だ」と分かっていても、現場ではどうしても摩擦やすれ違いが起きてしまいがちです。 どうすれば、全く違う役割の相手を心から認め合えるのでしょうか。

浦安のテーマパークで行う「1泊2日」の研修

私の友人に、この「起承転結」を活用した非常に面白い研修を行っている人がいます。

1泊2日の合宿形式で行われ、事前に参加者それぞれのタイプ(起・承・転・結)を診断した上で、初日は大勢の人で賑わう浦安のテーマパークへ出かけます。

面白いのはここからです。 同じパーク内を歩きながら、タイプごとに全く異なる「お題」が与えられ、各自がスマホで見つけた答えをどんどん事務局へ送るのです。

・「起」へのお題:「第三のパークを作るとしたらどんなもの?」 妄想力あふれる彼らは、「タイムマシーンで太古から未来を旅するパーク」や「広大な地底空間を冒険するパーク」といった壮大なコンセプトを次々と送ってきます。

・「承」へのお題:「誰とコラボしたら一番面白い?」 意味づけが得意な彼らは、「落語家と組んで、退屈な待ち時間を大爆笑の演芸空間に変えてしまおう」「ゲーム開発者と組んで、パーク全体を大人も本気で遊べる巨大な謎解きダンジョンにしよう」と、遊びと笑いを掛け合わせた新しい世界観をデザインします。

・「転」へのお題:「1DAYおすすめマップを作ろう」 論理派の彼らは、混雑状況やアトラクションの配置、最短ルートを緻密に分析し、最も効率よく楽しめる無駄のない動線を設計します。

・「結」へのお題:「パークの改善ポイントを100個見つけよう」 日々の運用を支える彼らは、「女子トイレの列が長い」「ゴミ箱の位置が分かりづらい」といった細やかな改善点を、驚くべき観察眼で次々と拾い上げます。

2日目の共有で起きる「相互の敬意」の連鎖

そして2日目。全員で集まり、各自が何を考えていたのかを共有し合います。 この時間が圧巻なのです。

同じ風景を見ていたはずなのに、持ち帰ってきた視点と答えがまったく違う。 ここで、お互いから学び合う素晴らしい連鎖が生まれます。

「承」は「起」の壮大な話から新しい軸(世界観)をつくり出し、「転」はその軸から学んで緻密な計画へと落とし込んでいく。 「起」は、荒削りな妄想が論理によって形になるプロセスに深く学びます。

そして「結」は、「起」のあまりに壮大で突拍子もない発想に「自分には逆立ちしても思いつかない!」と目を丸くします。 同時に「起」も、「結」の100個の改善点を見て「パークの快適さが保たれているのは、この観察力があるからだ」と深く敬服するのです。

具体的なアウトプットを突き合わせることで、「あいつ、そんな視点で見ていたのか!」という驚きが、本物の敬意へと変わっていきます。

組織に必要な「4つの思考の時間軸」

この研修が教えてくれる本質は、強い組織には「思考の時間軸の違い」が必要だということです。

・未来を考える「起」

・未来を呼び寄せる「承」

・具体的に落とし込む「転」

・やりきる「結」

「起」がはるか先の未来を思い描き、「承」がそれを今ある社会の文脈へと引き寄せる。 「転」が目の前の計画に落とし込み、「結」が日々の現場でやりきる。

どれか一つでも欠ければ、イノベーションは絵に描いた餅で終わるか、あるいは日々のルーティンに埋没してしまいます。 大切なのは、全員が「同じ時間の長さ」で物事を考えることではありません。 10年先の未来を見つめる思考もあれば、明日の確実な一歩を見つめる思考もある。それぞれの思考の時間軸を担う仲間を認め、敬意を持ってバトンを繋ぐことなのです。

おわりに

あなたのオフィスや仕事の現場も、実はあのテーマパークと同じです。 机を並べる仲間たちは、それぞれ全く異なる思考の時間軸と視座で仕事に向き合っています。

もし今、意見が食い違って悩んでいる相手がいるなら、少し視点を変えてみてください。 「あの人は今、どの時間軸から世界を見つめて考えているのだろう?」

相手の「見ている景色」にそっと立ってみた瞬間、反発は「なるほど!」という納得へと変わります。さあ、チームの「視点の違い」を面白がりながら、未来を創るバトンを繋いでみませんか。

※本内容の引用・転載を禁止します。

pagetop